全体解説
人気校の変更点を総まとめ! 共テ利用の情報必須方式や多科目型の導入、英語外部検定の新規利用に要注目!
私立大専願者の「共テ離れ」や「年内入試」志向が加速する!?
『螢雪時代』編集部では、全国の私立大から2025年(以下、25年。他年度も同様)新課程入試の概要(科目・配点、募集人員、日程など)を掲載した「入試ガイド」を集めた。
新課程への移行に伴う、新登場の教科・科目(情報、歴史総合など)の指定状況については、「新課程入試 科目指定の傾向をつかむ!」で全体的な傾向をまとめた。ここでは、新課程の移行に伴う、新登場の教科・科目(情報、歴史総合など)の指定状況を除いた、24年入試からの変更で、志望動向に影響しそうなポイントを、主に全国各地区で志願者数の比較的多い大学について、一般選抜、つまり独自入試と共通テスト(以下、共テ)利用方式を中心に紹介する。
『螢雪時代』9月号付録「2025年 全国私立大学 入試科目・配点一覧」とあわせて活用し、志望校の入試情報を把握した上で効率的な受験対策や併願作戦を立てよう。なお、詳細は各大学の入試ガイドや募集要項を必ず入手し、確認してほしい。
25年の4(6)年制大学受験生数は、24年より約2%増加する見込み(小誌推定)。新課程初年度の共テは、新登場の教科・科目以外の変更は少なく、既卒者対象の経過措置(旧課程科目の出題)もあり、大きな難易変動はなさそう。ただし、情報の追加、国語の出題増、数学の出題範囲増などの負担感が敬遠材料となり、私立大専願者の「共テ離れ」が進みそうだ。また、新登場の教科・科目の影響が小さい私立大難関~準難関校の一般選抜へ、国公立大からの併願増が予想される。
ここ数年の私立大の易化傾向から、難関~準難関校への「チャレンジ志向」が続く一方、中堅校を中心に学校推薦型・総合型選抜(以下、推薦型・総合型と略)で「早く確実に」決める傾向が強まると見られる。特に首都圏では、東洋大・大東文化大などで「学科試験で判定、併願可」の推薦型を導入。関西地区では一般的なタイプだが、首都圏ではまだ珍しい。一般選抜に近い実施方法のため対策が立てやすく、模試代わりにも使えるため、多数の志願者を集めるのは必至。一般選抜の志望動向にも影響を及ぼしそうだ。
立命館大・関西学院大の共テ利用で情報必須の方式を新規実施
①共テ利用方式の変更
私立大の共テ利用方式では、情報は「選択」あるいは「課さない」がほとんどだが、情報を必須とする新方式を導入する大学もある。また、多科目型を導入する傾向が続いている。
【情報必須の方式】
立命館大では7学部の共テ併用方式で情報活用型を新規実施。関西学院大の共テ利用1月出願でも情報必須の8科目型を新規実施。この他、獨協大・東京都市大でも情報必須の新方式を導入する。
【多科目型の導入】
青山学院大-国際政治経済の共テ利用、日本女子大の共テ利用前期で5科目型を、名城大-法・農・薬のC方式前期で5教科型を、近畿大― 情報の共テ利用前期で6教科7科目型、同― 建築の共テ利用中・後期で5教科7科目型を導入。情報必須の新方式と合わせ、国公立大併願者が主な対象と見られる。
【共テ併用型】
早稲田大- 社会科学・人間科学が独自入試を、独自入試と共テの成績を組み合わせる「共テ併用方式」に全面的に移行する。
【その他】
聖心女子大・聖マリアンナ医科大で共テを新規利用。一方、獨協医科大-医で廃止する。また、立命館大の共テ利用3月選考では、7学部で5教科型と3教科型の2タイプを廃止する。
②独自入試の変更
【実施方法】
国際基督教大で一般A方式を人文・社会科学選択、自然科学選択、日英バイリンガル面接利用の3タイプに分割する。
【新方式】
東邦大- 医・薬・理・看護・健康科学で統一入試を、大阪歯科大-歯・医療保健・看護で全学部日程を新規実施する。医療系大学の共通入試導入として注目される。
【試験日程】
実践女子大では1月実施の一般Ⅰ期を新規実施。甲南大では一般中期の試験日程を「2/9→2/17・18」に繰り下げ、法・経済・経営・マネジメント創造・理工で一般後期を廃止する。
③英語外部検定利用の拡大
独自試験や共テの英語の代わりに(または併用し)、英語外部検定を利用する方式の導入が、ここ数年に続いて盛んだ。芝浦工業大の一般前期・全学統一日程、玉川大の全学統一入試前・後期では、英語の独自試験を廃止し、共テの英語または英語外部検定の利用に全面移行。また、慶應義塾大- 文の一般選抜で新規利用する。この他、主な新規利用例として、亜細亜大の全学統一入試前・中期、國學院大の一般A日程、中央大-商の学部別選抜、津田塾大の一般A方式、名城大の一般A・F・K方式、武庫川女子大の一般前・後期などが挙げられる。なお、早稲田大では英語外部検定を利用する方式を、商で廃止する一方、文・文化構想の2学部では募集枠を拡大する。
④受験生の経済的負担の軽減
【奨学金・特待生】
神戸女学院大で「150周年記念 共通テストスカラシップ制度」を新設。新規実施の共テ利用スカラシップ5科目型で大学指定の得点率を上回った入学者は、授業料等の半額を2年間減免される。
【受験料減額】
東京工科大では共テ利用前・中・後期の受験料に、期ごとの定額制(併願しても1万5千円のまま。従来は1万円増)を導入する。
⑤その他の変更
【キャンパス移転】
東京理科大-薬が「千葉県野田市→東京都葛飾区」、龍谷大- 社会が「滋賀県大津市→京都市伏見区」にキャンパス移転。いずれも志願者大幅増の要因となりそうだ。
【女子大の共学化】
清泉女学院大(清泉大に改称予定)、名古屋女子大(名古屋葵大に改称予定)、神戸松蔭女子学院大(神戸松蔭大に改称予定)が全学部で共学に移行し、東京家政学院大・園田学園女子大(園田学園大に改称予定)・活水女子大も一部の学部を共学化する。
ここがポイント
- 東洋大など「学科試験重視、併願可」の推薦型の導入も一般選抜の動向に影響か
- 首都圏では早稲田大、京阪神では立命館大・関西学院大・甲南大の動向に要注目