基礎知識
2024.08.15
大学入試には様々な方式があり、スポーツ能力に優れ、大会で実績を残した高校生が受験できる、スポーツ推薦という制度もある。旺文社が全国の大学に調査したデータも含めスポーツ推薦の内容、スポーツ推薦を受験する際の注意点、スポーツ推薦の受験スケジュールについて詳しく解説していく。
スポーツ推薦は、スポーツ活動の実績や大学入学後の競技活動への意欲を評価して行われる受験方式だ。高校までの部活動で優れた成績を収めた生徒や、将来の競技活動に強い意欲を持つ生徒が対象となる。
なぜスポーツ推薦があるかというと、大学にとってスポーツは重要な役割を果たすからだ。スポーツは学生の健全な成長や人間関係の構築だけではなく、大学の知名度向上にも寄与する。そのため、スポーツ推薦を受験する生徒には、大学在学中に大会で実績を残すことが期待される。
スポーツ推薦を受けるにはある程度の大会実績が必要となる。その他、どんな観点で評価されるのかについて説明していく。
スポーツ推薦で評価される生徒は、一般的に全国大会出場、全国ベスト16またはベスト8程度の実績を残した生徒が多い。早めに実績を積み重ねることで、出願時に有利になるため、高校2年生までに成績を残せると安心だ。しかし、評価基準は実績だけに限らず、高校の成績も含まれている場合が多い。そのため、評定平均もかなり重要になってくるので、日々の授業を大切にすることは忘れてはならない。
スポーツ推薦では、大学入学以降も競技を継続する意向が強い生徒を重視する傾向がある。スポーツ推薦で入学した生徒が、継続して活躍することを期待しているからだ。そのため、大学入学後も続けられるかどうかも含めてよく考えよう。
大学によっては、高校時代に全国レベルの実績がなくても、入学後に運動部に所属する意思があれば出願できる選抜方法もある。実績がない場合でも、志望する大学があれば調べてみるといいだろう。
旺文社の2019年の調査によると、スポーツ推薦で特定の競技のみを募集していると回答した大学115校のうち、最も募集が多かったのは野球(79校)、続いてサッカー(73校)、バレーボール(65校)となっている。
いわゆるメジャースポーツと言われる競技が多いが、スポーツ推薦を実施する目的の1つである、大学の知名度向上と関係しているのが背景として考えられよう。一方で、下のグラフを見てもらうとわかるが、スポーツ推薦が実施されている競技はかなり多様だ。メジャースポーツではないからといって、スポーツ推薦を諦めるのではなく、自分が目指したい大学の募集要項を確認してみるといいだろう。
スポーツ推薦は、秋頃に出願して年内に合格発表まで行われるケースがほとんどだ。年内に受験を終えられるため、大学入学に向けてトレーニングに集中したり、一足先に強化練習に参加したりすることもできる。高校3年生の夏まで部活動がある場合は、準備期間が限られるため、早めに準備を進めておこう。
スポーツ推薦 スケジュール例
高校3年生
入試要項発表
出願
一次選考(書類審査)合格発表
二次選考(小論文・面接など)
二次選考 合格発表
入学手続き
このスケジュールはあくまでもよくある例だ。大学によっては、8月などに練習会を実施していて、そこへの参加が条件となっている場合もある。気になる大学がある場合や、大学でも競技を続けたい場合は、早めにスケジュールを確認しておく必要がある。
スポーツ推薦を受験するためには顧問の先生や学校長による推薦などが必要になることがある。自分がスポーツ推薦で受験できるのかわからない場合は、まず顧問の先生に相談しよう。大学の指導者がスカウトのために部活動の大会を見ていることもあるため、しっかりと大会で成績を残すことも大切となる。
志望校のオープンキャンパスや体験会に参加することで、大学の雰囲気やスポーツ施設、指導者の方針を直接知ることができる。これにより、自分に合った大学を選ぶ参考になる。大学によっては体験会が設定されていることがあるので、体験会に参加することで、大学の競技環境や指導者との相性を確認できる。体験会や練習への参加が出願資格となるケースがあるので、入試要項などをよく確認しておこう。
大学の競技環境を事前に調べておくことも大切だ。インターネットやSNSなどを活用して、大学の部活動の様子や指導者の情報を収集しよう。また、学生寮などに入る場合には、寮の見学や実際に寮生活を送る学生に話を聞いてみたりするといいだろう。また、スポーツ推薦で合格した先輩がいたら話を聞いておこう。
スポーツ推薦ではスポーツの実績が重視されるが、一定の学業成績も求められる。大学の授業についていけず、単位を落として留年してしまうと、その後のキャリアにも影響が出る可能性があるので、十分注意しよう。
スポーツ推薦の入試では、面接・小論文・口頭試問が一般的となる。対策については他の推薦入試とほぼ同じと考えて問題ないだろう。面接試験では、礼儀正しくふるまい、しっかりと受け答えができれば大丈夫だ。落ち着いて試験に臨めるよう練習しておこう。また、実技試験がある大学もあるので実技試験の練習もしておくといいだろう。
スポーツ推薦も他の入試方式同様にメリット・デメリットはある。確認して頭に入れておこう。
スポーツ推薦の場合、出願資格である程度受験者が限定されているため、倍率は1.0倍〜1.5倍程度になる。ほかの学校推薦型選抜に比べて合格しやすい傾向があるのがメリットと言えよう。ただし、大学によっては倍率が2倍を超えることもあるので油断は禁物。
スポーツ推薦は基本的に専願受験のため、複数の大学や学部を受験することはできない。また、スポーツ推薦では受験できる学部や学科に制限があることがある。例えば「経営学部に野球部枠1名」など、競技ごと・学部ごとにスポーツ推薦の人数が定められている場合もあるので、自分のやってきた競技で、どこの学部学科を受験できるか、その枠の倍率は等、しっかり確認しておきたい。
不合格になってしまった場合は、他の受験方式の検討が必要になる。もしものために、総合型選抜や指定校推薦、公募制推薦、一般選抜など他の受験方式も検討しておくこと。部活動で全国レベルの成績が残せなくても公募制推薦等の学校推薦型選抜を利用することができ、ここでも部活動を頑張ってきた実績が評価されるので事前に検討しておこう。
私は高校時代、剣道部に所属していました。スポーツ推薦入試を受けようと思ったきっかけは、レベルが高いところで自分自身成長していきたいと思ったからで、高校1年生の夏に受験を決めました。
入学後、レベルの高い環境で競技に集中できるという点はよかったのですが、勉学やアルバイトとの両立が大変でした。また、推薦で入ったら基本的には部活を辞められないため、誰かに言われたからではなく、自分の意思で決めることが大切だと感じました。
推薦入試に向けてこれはやっておいたほうがいいことは、面接以外にも小論文等が課されることがあるので、その大学の出題形式や小論文テーマについてある程度調べておくことです。また、受験直前まで部活動がある場合、受験当日までかなりタイトなスケジュールになるため、大学へ提出書類の用意や面接練習などは早めに行っておくことが大切です。
吹奏楽等、文化部の部活動推薦を経験した先輩も同様に、「年内に入試を終えることができるため安心」「これまでの頑張りを入試に生かすことができる」「準備は早めのうちから行っておいた方が良い」と答えていました。
スポーツ推薦は基本的に入学後も競技を続けることが前提ですから、学業との両立を目指す強い意志が必要です。また、遠征費等の費用の負担も考えなければなりません。大学の公式サイトには示されない情報等もありますので、必ず監督や顧問の先生に相談してください。ほかの入試制度と同じように、早い時期から志望校研究などの準備を始め、合格を勝ち取ってください。