“大学入試の構図を変える!?”
選抜に螢雪編集部が切り込む!
● 東洋大学 入試部長
加藤 建二 氏
1987年、学校法人東洋大学入職。教務部、入試部、総務部などを経て、2013年から入試部長。学力を重視する入試改革を推進し、英語外部検定試験利用入試の導入などもけん引した。
東洋大が2025年度入試で導入した基礎学力テスト型の学校推薦型選抜。大きな話題となったその選抜は、2026年度入試では総合型選抜に変わり、評価の仕方などにも変更がある。25年度の結果と26年度の変更の狙いについて、仕掛け人の加藤建二入試部長に話を聞いた。
学校推薦型から総合型への変更は
より多くの受験生に機会を提供するため
基礎学力を重視する方針
東洋大が25年度に導入した“基礎学力テスト型”の学校推薦型選抜は、578人の募集人員に対して約2万人の志願者があった。関東地方の私立大では珍しい年内に学力試験を実施する形式や、併願可能な学校推薦型選抜だったことが受験生の関心を集めた。
この基礎学力テスト型の選抜は、26年度からは総合型選抜に変更される。加藤建二入試部長は「一言でいえば、より多くの受験生に受験機会を提供するための変更です。昨年、高校のスケジュールの都合や、学校推薦型選抜で出願できるのは1校のみという高校のルールが理由で、推薦書を書いてもらえなかった受験生が多くいました」と説明する。
最大の特徴である年内の基礎学力テスト実施(2教科)は、総合型選抜になっても変わらないが、26年度からは事前課題型の小論文が課される。さらに、配点は学力テスト200点・小論文10点・調査書等10点という傾斜のついたものとなる。これには、東洋大から受験生へのメッセージが込められているという。加藤部長は「そもそも“基礎学力テスト型”選抜を導入したのは、学校推薦型・総合型選抜で入学した学生の学力不足が背景にありました。一般選抜で入学した学生と比べると、教科・科目の基礎学力が課題だったのです。基礎学力テストを課すのは、『東洋大は基礎学力を重視します』という方針を明確にするためです」と語る。しかし、年内の基礎学力テスト実施を巡っては、様々な意見が飛び交った。
歓迎から、徐々に批判の声も
25年度に基礎学力テスト型の学校推薦型選抜を導入すると発表した当初、高校の指導現場からは歓迎の声が多かったという。学校推薦型・総合型選抜の受験生は、一般選抜の受験生に比べて学力が疎かになるケースが多い。年末まで勉強しなければならない“基礎学力テスト型”は、受験生の学力不足に課題意識を抱いていた高校の教員にとっても好意的に受け止められた。
しかし、徐々に批判の声が上がってきた。併願や推薦書に関する考え方が、関東地方における従来の学校推薦型選抜のあり方となじみにくかったためだ。さらに、学力検査は2月1日以降とする文部科学省の「入学者選抜実施要項」に抵触するのではとの指摘もあり、高校や大学関係者の間で議論が起こった。
“基礎学力テスト型”選抜の広まりで
学校推薦型・総合型選抜が変わる!?
年内に学力テストを課す理由
加藤部長は「年内の基礎学力テストではなく、年明けの共通テストを利用すればいいという意見もありました。ただ、それでは年内に合格を決めたい、東洋大を志望する層のニーズとかみ合いません。また、国公立大受験を見据えて共通テストを受験する層は、そもそも学校推薦型・総合型選抜で決めようとは思っていない人が多いはずです」と説明する。
学校推薦型・総合型選抜の受験生の学力は、大学の入試難易度によって異なる。難関大の場合は一般選抜より優秀な層が受験することが多いが、中堅大の場合は一般選抜での合格が難しい層が受験する傾向が強い。東洋大は後者寄りだったものの、一般選抜を重視してきた従来の伝統もあり、前述の通り学校推薦型選抜でも基礎学力のある受験生を集めたい事情があった。志願者約2万人という結果により、受験生のニーズが確かめられた。
事前課題型の小論文が必要に
“基礎学力テスト型”選抜導入2年目となる26年度は、批判の声や議論も踏まえて総合型選抜となる。注目したいのは、新たに加わる事前課題型の小論文。受験生には、東洋大の建学の精神や教育理念などを理解したうえで記述が求められる予定だ。小論文や調査書等が加わることで、より多面的かつ総合的な判定方法で評価できるようになる。
加藤部長は「基礎学力を重視しているため小論文の配点は低めですが、東洋大の理念を理解して入学してほしいという思いがあります」と趣旨を説明する。
他大学への広まりも歓迎
東洋大の“基礎学力テスト型”選抜は併願可能な点も注目を集め、実際に国公立大と併願した受験生も多かった。加藤部長は「もちろん東洋大が第1志望の受験生に入学してほしいですが、国公立大志望の受験生にもぜひ併願してもらいたいです」と呼びかける。
関東地方では、26年度も複数の大学が東洋大と同様の入試の導入を表明している。「他大学に広まるのは歓迎します。多くの大学において、学校推薦型・総合型選抜でほとんど学力を試されず入学できる現状が変わってほしいです」と期待する。
加藤部長から受験生へのメッセージ
基礎学力をつけたうえで、自分に合う入試を探して
東洋大を目指す受験生の皆さんには、基礎学力をつけて受験してもらいたいのが前提です。ただ、そのうえで自分に合う入試でチャレンジしてほしいと考えています。東洋大の募集人員のうち70%ほどは一般選抜ですが、基礎学力テスト型以外の学校推薦型選抜・総合型選抜も16%ほどあります。
高校時代に探究活動などに力を入れた人を評価する入試もあるので、基礎学力を身につけたうえで自分に合う入試を見つけて、ぜひ東洋大にチャレンジしてください。