
明治初期、日本初の民間ワイン醸造所が設立された山梨県は、現在、日本ワイン生産量で全国トップを誇っている。地元では、ワインはワインショップまで行かずとも、どこのスーパーでも買えるもので、身近な存在。当たり前に飲むお酒として、日々の食卓で楽しまれている。

1947年、山梨県産のワインの品質向上を目指し、この地に誕生した果実酒専門の研究機関「発酵研究所」。ここから発展した「山梨大学ワイン科学研究センター」では、「一番のポイントは人材の育成」とセンター長の鈴木俊二先生が語るように、教育に力を入れている。大学1年次からワインについて学べるワイン科学特別コースもあり、ブドウ栽培やワイン製造に精通したスペシャリストを育成している。

1・2年次にブドウ栽培や管理方法を学び、3年次以降に実際にワインを仕込む醸造実習を経験。
ワインについて学ぶと言っても、関連する学問分野は実に幅広い。たとえば、ブドウを育てるためには農学分野の農芸化学や果樹園芸学、ワインをつくるための醸造学、おいしさを分子レベルで追究するための工学系応用化学……。「さらに、できあがったワインの熟成や品質管理なども含め、ワインを軸として、卒業後に食品づくり全般で活躍できる学びを提供している」と鈴木先生。卒業生の約半数がワインを含むお酒づくりに、残り半数はそれ以外の食品関係に進むというのも、ワイン科学特別コースの学びに幅広さを実証していると言える。

3年次からは、自分たちでつくったワインのテイスティング(官能評価)実習もある。

「ワイン科学研究センター」地下のワインセラーには、1950年代から歴代OB・OGがつくったワインが保管されている。
大学では学生にワイナリーでのアルバイトを推奨し、紹介もしているという。また、学生自ら農園主に交渉し、研究用のブドウやワインを提供してもらうこともあるのだそう。
逆に、ワイナリーから大学に相談されることも。人間がウイルスに感染していても発症しないことがあるように、ブドウの樹も見た目には問題がなくてもウイルスに感染していることが多いため、大学ではウイルスを見つけたり、“ウイルスフリー苗”の栽培にも取り組んでいる。常に生産者の生の声を聞きながら学問と社会を結びつけられるのも、日本でもっともワイナリーが多い山梨ならではだ。

生命環境学部附属農場のブドウ畑で栽培実習。このほか、20種類以上の醸造用ブドウなどを「ワイン科学研究センター」前庭で育てている。

“ウイルスフリー苗”の作出作業。ウイルスに感染していない細胞を無菌状態の瓶で培養し、この後、土の入ったポットに移植する。
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