
青森県立青森中央高等学校 総合学科推進部部長
笠井 敦司 先生
担当は国語。進学校での指導歴20年。最難関大の一般選抜のほか、学校推薦型選抜・総合型選抜の対策指導にも取り組んでいる。小論文・志望理由書の書き方に関する個別指導や講演、図表読み取り問題の対策指導も実施。

直前期における過去問演習の目的は、ズバリ「得点になる答案作成技術の習得」です。これまでの過去問演習の目的は、求められる知識の正確さと応用力を知ることだったと思います。いわばバーの高さを知ることに重きがありました。しかし直前期は、バーを飛び越える技術に磨きをかけることに焦点を当てて取り組む必要があります。具体的には、(1)文章における傍線部の位置づけの理解、(2)設問の正確な把握、(3)答案に必要な要素の特定とその構成の仕方、(4)的確さと簡潔さを両立させた表現方法です。これらについて実戦的に理解し、習得することが、直前期に過去問を解く目的です。目的の解像度を上げて過去問に取り組むことで、初めて得点になる答案を作成できるようになるのです。

特に現代文において、解答例に納得いかないことはないでしょうか。自分の答案と解答例を照らし合わせてその違いと共通点を洗い出す際は、特に違いの部分に焦点を当てることが大切。「自分の答案のほうが、要点が簡潔にまとまっている」「解答例の構成のほうが整理されている」のように、批判的に分析することで答案作成の解像度が上がります。解答例は、その設問に対する過不足ない解答を考える対案として、うまく活用しましょう。

成長を実感しながら学び進めるために、おすすめしたいのが「1要素1点採点法」です。実際の配点とは無関係に、記述答案に必要な要素1つ=1点とし、その総獲得ポイントを検証するのです。要素が3ポイントならば、3点満点。実力を数値化して把握することができて非常に効果的です。大問総計で獲得ポイントが6割を超えることを目指して解きましょう。解答ポイントを確実に獲得しようとする目的意識とその力が養われます。

すでに解いた過去問をもう一度じっくり解く余裕はないですよね。そこでおすすめなのが「設問の類型化、答案の構成の型のあぶり出し」のために過去問を利用すること。すでに解いた直近3年分、できれば5年分の設問文を分析し、設問の傾向をつかみます。たとえば、「従来の考えとの違いを説明させる問題がある」のように類型化し、それに対して「○○は、AではなくBすることである」のような構成の型を見いだすのです。

「合格点を取る」ためには時間配分も戦略的である必要があります。試験時間に合わせてあらかじめ大問ごとの時間配分を行い、その枠内で設問ごとの解答時間の目安を立てます。難しいと感じた設問は完成度を深追いしすぎず、最低限のポイントをまとめて切り上げる勇気を持ってください。あくまで目的は「解答に必要な要素を、試験問題全体を通じてできるだけ多く拾うこと」であり、個別の答案の文章としての美しさではありません。
過去問の練習量は多いに越したことはありません。第1志望校が国公立大の場合は最低でも5年分、できれば10年分解きたいところです。科目数にもよりますが、3日で1年分として、共通テスト明け30日間で10年分解くことは十分可能です。併願校対策を並行して行うのはなかなか大変ですが、これも5年分は解きたいところです。私立大の場合は国公立大よりも受験日が早いので、集中的に取り組みましょう。国公立大後期については前期試験が終わってから1日1年分ペースの短期集中で対応するのが現実的でしょう。
傾向は「出題文章の傾向」「設問の傾向」の2つに分けられますが、その変化はいずれも表面的なものに過ぎません。たとえば、「本文中に図表が含まれていた」や「記述の字数が多くなった」などは、出題意図に照らしてそうする必然性があっただけであり、「筆者の主張や文章の展開を押さえ、根拠に基づいて説明する」という本質は不変です。普段から他大学の問題にも触れて本質の理解を心がけ、本番でうろたえないようにしましょう。


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