近年注目を集めるデータサイエンスの専門家の目に、文学部の学びはどう映るのか。
文学研究者との共同研究に取り組んだ実績のある九州大学理学部の川野秀一先生にお話を聞いた。

九州大学 理学部数学科 教授
川野 秀一 先生
専門は統計学、機械学習。データから有用な情報・知識を獲得するために、統計学的観点から新たなデータ解析手法の開発研究に取り組む。生命科学分野との共同研究も行う。
データサイエンスは非常に幅広い学問です。国勢調査や医療、スポーツ、テレビの視聴率など様々な分野でデータサイエンスの手法が活用されており、私はその解析手法の開発に取り組んでいます。近年は情報社会の発展に伴い、多様なデータが取れるようになっているので、新しい手法が必要になるのです。
私が文学研究者との共同研究に取り組んだきっかけは、2012年に当時勤務していた大学で、万葉集を研究していた村田右富実先生と出会ったことです。万葉集をデータ化した村田先生がその活用方法に困り、データ解析の手法を身につけていた私に相談が持ち込まれたのです。前述の通りデータサイエンスは様々な分野で活用されていますが、文学研究者との連携事例はほとんどありませんでした。
未開拓の分野だったので、当初は苦労もありました。たとえば、専門分野が異なり過ぎたため、私と村田先生はお互いの言っていることがわかりませんでした。定期的な打ち合わせで用語などのすり合わせをしました。
一方で、誰も参入していない分野のため、研究者として新しい道を開拓していくやりがいを感じました。個別の短歌に関する研究はあるかと思いますが、私たちが取り組んだのは、データサイエンスの手法で万葉集の特性を明らかにする研究でした。万葉集全体を俯瞰する意義ある研究になったと思います。文学とデータサイエンスの共同研究には可能性しかありません。文字があればデータ化ができるので、たとえば近代文学などもデータ解析ができます。共同研究に取り組む研究者が今後増えることを期待しています。
川野先生の共同研究
日本古典文学を専門とする村田右富実教授(関西大学文学部)との共同研究で、万葉集の計量分析を実施。短歌内で使用されている音に着目し、データサイエンスの手法を用いて分析。歌の調子から、柿本人麻呂ら作者の歌を特徴づける音素を判別した。

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