
ふと見上げた夜空の向こうに広がる、あまりにも壮大な未知なる宇宙。
さまざまなアプローチで宇宙の謎に迫る3人の先生に、研究の現状やこれまでの実績、そして学生の学びについて教えてもらった。
宇宙研究の「今」と、大学で学ぶおもしろさをのぞいてみよう。
情報・写真提供◎筑波大学・京都産業大学・関西学院大学
編集協力◎株式会社エディキューブ

筑波大学 計算科学研究センター教授
大須賀 健 先生
研究者にとって最大の喜びは、誰も知らなかった真理や法則を人類で初めて知ることです。中でも宇宙はまだまだ謎に満ち、地球上では起こり得ないような現象が数多く存在しています。こうした謎を解き明かした瞬間の喜びは、とても言葉では言い表せません。

京都産業大学 理学部 宇宙物理・気象学科准教授
西道 啓博 先生
「宇宙」は人類が扱える最大スケールのテーマですが、たった1つの「重力」という法則である程度まで説明が可能。それでいて大半は「ダークマター」と呼ばれる正体不明の物質で、未知の謎が眠っている。手が届きそうで届かない奥深さに魅力を感じています。

関西学院大学 理学部 物理・宇宙学科教授
松浦 周二 先生
「宇宙で最初の天体の光を見たい」という思いを胸に、観測装置を搭載した超小型衛星の制作·打ち上げに取り組んでいます。自分の手で生み出した装置で壮大な宇宙に挑む、そのスケールのギャップと、目標へと着実に進んでいく実感が、研究の原動力になっています。
自然を観察し、「なぜそうなるのか」という疑問を観測や実験で確かめながら、法則を明らかにしていく。こうした自然科学の研究手法は宇宙研究にも当てはまる。
観測は主に望遠鏡で行われるが、近年、この宇宙を調べる“目”が急速に進化。たとえば、地球から150万km離れた宇宙空間を飛行するジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が、2022年の科学運用開始以降、それまでは観測しにくかった初期宇宙の姿を次々に捉えている。
「それまでの理論で説明がつかない観測結果が出ることも少なくありません。頭の中では考えられていても実際に確かめるのが難しかったことを、いよいよ宇宙を見て確かめられる時代になってきたのです」
こう語るのは筑波大学 計算科学研究センターの大須賀 健先生。関西学院大学の松浦 周二先生も、観測技術の進歩が宇宙研究を大きく前進させたと言う。
「ビッグバンの証拠とされる『宇宙マイクロ波背景放射』の観測が、この20年ほどで一気に進み、宇宙全体の枠組みを研究する宇宙論が大きく進展しました」
さらに、宇宙を調べる“目”そのものが増えていると解説する、京都産業大学の西道 啓博先生。
「たとえば、ブラックホールの合体を捉えられる重力波や、宇宙のさまざまな場所から飛んでくる『ニュートリノ』と呼ばれる粒子など、異なる情報を組み合わせた『マルチメッセンジャー天文学』も広がりを見せています。これまで宇宙観測の主役だった光を利用した望遠鏡も含めて、観測から得られる情報は格段に増え、今や『ペタバイト』が当たり前。将来の大型観測ではエクサバイトに迫る規模のデータを扱う時代になりつつあります」
また、松浦先生は近年の日本の宇宙観測を取り巻く環境の変化も指摘する。
「かつて“宇宙”といえば小惑星探査機『はやぶさ』をはじめ、主にJAXA(宇宙航空研究開発機構)が主導する大型プロジェクトが中心でした。しかし近年は、景気の後退とも連動して、大型計画が実現しにくい状況が続いています。そんな中、予算や規模を抑えて実現できる超小型衛星に注目が集まり、大学や民間企業による開発が進んできました。今や超小型衛星は、宇宙研究に欠かせない存在になっています」
近年、進化を遂げたのは観測技術だけではない。実験室には持ち込めない宇宙をコンピュータの中で再現する数値実験も、スーパーコンピュータの性能向上によって、より大規模で精密な計算ができるようになった。大須賀先生によると、「理論の専門家と観測の専門家が情報を交換しながら共同研究を進めるというスタンスは、ここ20年で特に強まったように感じています」
観測や実験、データ解析、装置開発……。「宇宙を知りたい」という思いを胸に、宇宙研究者たちはさまざまなアプローチで、まだ誰も答えを知らない謎に挑んでいる。
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