
計算科学研究センターの学びとは?スーパーコンピュータを用いた数値実験によって、理論に基づいた宇宙の誕生や進化、ブラックホールをはじめとする天体の形成などをシミュレーション。実際の観測によって得られたデータと照らし合わせながら、コンピュータ上で宇宙を再現し、その真相を探究している。
現在、宇宙は約138億年前に誕生したと考えられている。計算科学研究センターでは、そんな途方もない昔の「初期宇宙」に生まれた星や銀河が、どのように形成され、進化してきたのかをスーパーコンピュータ上で再現し、研究している。
同センター教授の大須賀 健先生が挙げたのは、ブラックホールに関する研究成果。
「さまざまな物質が吸い込まれ、光が飛び回りながらジェット(プラズマなど高エネルギー粒子)が噴き出すところをスーパーコンピュータのシミュレーションで再現できた、世界でも数少ない研究グループの1つです」
その後、イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)※で捉えたブラックホールの姿は、シミュレーションの予想通り、暗い領域を明るいリング状の構造が取り囲むものだった。しかしその一方、近くにあるとされたジェットが発生している場所は見えなかったという。
※イベント·ホライズン·テレスコープ(EHT):世界各地にある電波望遠鏡で同時に観測することで、ブラックホールの姿を捉えた国際プロジェクト。
「ジェットは一体どこから出ているのか、暗くて見えないだけなのか、予想より遠くから出ているのか……。議論が大いに盛り上がりました。宇宙研究はわかったことが1つ増えると、わからない謎が3つ増えるという感じで、本当に刺激的です」

計算科学研究センターによる球状星団の再現。光の伝搬などの計算を可能にしたことで、より現実に近い物理現象のシミュレーションに成功した
学部生としてスーパーコンピュータを使って宇宙の研究に取り組むのは、基本的に理工学群物理学類4年次の卒業論文から。年度によってはスーパーコンピュータで実習する1~3年次対象の「課題探究実習セミナー」もあるが、特に1・2年次は力学や電磁気学といった物理の基本科目をマスターすることが大切だと大須賀先生は断言する。
「公式を当てはめて問題を解く高校の物理と異なり、大学では『なぜそうなるのか』という原理を理解することが求められるため、改めて基礎から学び直す必要があります。基礎が十分でないと、どの分野の宇宙研究に進んでも苦労することになってしまいます」
そのため、受験生にはむしろ英語や現代文、数学に取り組んでほしいという。
「研究に数式を使う物理では、数学の力が不可欠。論文の読み書きや研究者間のコミュニケーションに必須の英語も言うまでもないでしょう。それ以上に大切なのは現代文です。まず日本語で物事を論理的に考えられてこそ、研究を発展させることができるのです」
宇宙を目指すなら、受験勉強の主要3教科の実力を充実させることが大切だ。

2026年3月から計算科学研究センターで運用しているスーパーコンピュータ「Sirius (PACS12.0)」

センターで研究をしている学生の様子。国立天文台や他大学など、研究内容により適した他施設·機関のスーパーコンピュータを使うこともあるという
筑波大学 理工学群 物理学類 宇宙理論研究室4年 M.Sさん
力学だけでなく、量子力学や電磁気学、統計力学など、学んできたあらゆる科学の知識がパズルのように組み合わさって宇宙の姿を解き明かしていく点におもしろさを感じています。宇宙は学ぶほどに新しい謎が現れる奥深い存在。将来は、宇宙理論分野の研究を続けながら、中高生に科学のおもしろさを伝えられる教員になりたいです。
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