続いては、受験を団体戦で乗り切るべき科学的根拠、さらに、団体戦で力を発揮するための具体的なメソッドについて、脳科学に詳しい吉田たかよし先生に教えていただいた。周囲の人たちと良い関係を築いて無理なく受験期を乗り切り、志望校合格を勝ち取ろう。

医学博士・本郷赤門前クリニック院長
吉田 たかよし 先生
東京大学工学部卒、NHKアナウンサーとして活躍後、医学部に再入学し、東京大学大学院医学博士課程修了。受験生専門の医療機関・本郷赤門前クリニック院長。著書『合格させたいなら脳に効くことをやりなさい』(青春出版社)など。

人間は、仲間と協力することで大自然の中で生き抜いてきた社会的動物であり、周囲の人とつながっているという感覚が脳の働きを健康に保つ効果を持っています。逆に言うと、人間の脳は孤独に弱く、孤独な状態が続くと脳はストレスや疲労に対して脆弱になり、記憶力、判断力、思考力といった受験に不可欠な能力が軒並み低下します。また、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌量が増え、不安、緊張、パニックといった状態に陥りやすくなります。さらに、ストレスが溜まると睡眠の質が悪化し、それによっても集中力や記憶力、意欲が低下します。そして、ちょっとしたことで落ち込みやすくなり、うつ病に近い状態になることもあります。
受験勉強においても、孤独は最大の敵の一つ。試験本番は独りで臨む個人戦ですが、そこまでの受験勉強はみんなで協力して励む団体戦にしたほうが有利です。仲間とみんなで頑張ること、友人や恋人など自分を受け入れてくれる存在がいること、先生や家族など悩みを相談できる相手がいることで、脳のストレス耐性は格段に高まります。「自分は独りじゃない」を合言葉に、みんなで力を合わせて長い受験生活を乗り切りましょう。


人間の脳には、応対する相手の脳とつながり共感し合いながら働く性質があります。学習においても同様で、友人同士で教え合う「ピア・ラーニング」が、学習効率を高める作用を持つことが実証されています。“教える・教わる”というアウトプット主導型の学習により長期記憶化が進みやすく、教える側にとっては覚えた知識を使うことでより深い理解につながるというメリットも。また、仲間と苦楽をともにすることで脳のストレス緩和につながり、「みんなで頑張ろう」という共感的動機付けが起こり、勉強に対する負担感が軽くなります。

学校や塾で気の合う先生を見つけ、積極的に質問しましょう。質問をしたことは記憶に刻み込まれ、長期記憶になりやすいのです。また、質問を想定して授業を聞くと、自分は何がわからないのかが明確になり、能動的な学習につながるというメリットもあります。受験生にとって難しい目標設定(いつまでに何をやるか)や、優先して取り組むべき課題の選定についても、これまで多くの受験生を見てきた先生に相談するのが得策。先生を訪ねる前に質問事項や論点をメモしておけば、5~10分程度の相談でも有益な回答を得ることができます。

受験生にとって、保護者からの情緒的サポートは非常に重要です。「何があっても最後には助けてくれる」と思える存在がいることで、脳のストレス反応が抑えられ、疲労からの回復力が高まります。一方、実際は、保護者がプレッシャーを与えてしまうケースも少なくありません。「ストレス源」ではなく「心の安全基地」になってもらうよう、自分の目標の実現のためのサポートを依頼しましょう。また、身体的なふれ合いにより癒しのホルモン・オキシトシンが分泌されるため、親子でハグをしたり肩を組んだりするのもおすすめです。

恋人の存在には、感情がポジティブになる、自己肯定感が高まる、それによりストレスホルモンのコルチゾールが抑制される…といったプラスの側面があります。また、情緒が安定することで、模試の結果が悪いなどネガティブなことがあっても立ち直りやすくなります。一方で、関係性が不安定になったり、嫉妬などのネガティブな感情が芽生えたりすると、それ自体がストレスになってしまい、勉強にも影響が出てきます。付き合うのであれば、お互いにありのままの姿を認め、受け入れ合える関係性を作ることを意識しましょう。
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