河合塾 佐藤 裕治 先生
東京大学大学院理学系研究科修了。河合塾で長年にわたり、授業、模試作成、入試問題の分析に携わる。日本地理学会地理教育専門委員を務め、大学入試制度や高校の教育課程の改革に関しても詳しい。
苦手意識を克服するポイントは、“わかる”という感覚をいかに早く身につけるかである。「地理」とは、地形や地域の理(ことわり)を意味する。すなわち、地形の成因や地形と気候の関わり、あるいは自然環境と関連する地域の特徴など地理的事象の法則性を見出すことである。例えば、降水のメカニズムを理解して「どのような地域で雨が多くなるのか?」、さらに「雨が多い地域ではどのような生産活動が見られるか?」など、芋づる式に因果関係をとらえ、チャートで整理してみよう。実際の人の営みは自然環境だけで決まるわけではないが、まずはシンプルな理論から説明し、“わかる”という感覚を実感してほしい。やみくもに覚えて知識を積み重ねていくのでは、なかなか先が見えない。実は共通テストの多くの問題はシンプルな理屈で解くことができるので、第一にこれを演習に活用したい。
地理では、空間的な位置と自然環境や人間生活の関わりを理解することが重要である。地図上の位置関係の把握は、地形や気候の成因を論理的に理解するのに不可欠だ。今さらと思わず、赤道、南・北回帰線、南・北極圏が大陸のどこを通るかを確認しながら世界の略地図を描き、それをベースマップにして、緯度・経度、主要な山脈・高原、河川、平原などの位置と地名を押さえることからスタートしよう。緯度と気候帯、プレート境界と変動帯の分布などを、その理由を考えながら地図で把握することが重要である。
国別の統計資料を用いた問題は入試で頻出である。表やグラフ、統計地図から国を判定したり、判読したことを論述する形式が多く、統計から国の特徴をとらえる力が必要となる。ただし、国別の統計を片っ端から暗記しようとするのは効率的でない。入試対策としては、まずは先進国・途上国・新興国などにタイプ分けして、それぞれに共通する人口動態や経済発展、歴史的背景などを整理しよう。入試問題ではそれぞれのタイプの典型的な国が扱われることが多いので、どのような国がそれに該当するかをしっかり押さえたい。
日本の地誌的知識は中学校で学ぶ程度で十分だが、難関大の入試問題では日本の位置から自然環境の特徴をとらえたり、日本の地域をタイプ分けして産業や人口をとらえるなど、より踏み込んだ説明能力が問われる。例えば、自然環境については4つのプレートの境界と地形や4つの気団と気候の関係からその成因を、産業や人口については大都市圏と地方圏、大都市圏の都心と郊外、地方圏の中心都市と過疎地域などの統計値の差異を、チャートや比較対照表で整理し、日本各地の特徴を地理的位置から説明する力を身につけたい。
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