

全授業が英語で行われることで名高い国際教養大学(以下、AIU)に、興味を持っている人もいるのではないだろうか。
「AIUが中心に据えるリベラルアーツ教育で特に重視しているのが、『統合知』と『人間力』。特定の分野に偏らない幅広い知識や見識と、優れた人格や誠実さ、責任感を兼ね備え、卒業後に世界のどこに行っても活躍できるリーダーの育成を目指しています」
こう語るのは副学長の熊谷 嘉隆先生。しかし、そんな人材へと成長するための4年間は、なかなかハードなようだ。
75分間の授業はレクチャーと、質疑応答やディスカッションが、およそ半々で構成される。また、授業は Reading Assignmentを読んでいる前提で進められている。
「AIUでは読む、聞く、観る、といった学びのインプットと、それらを咀嚼した上で自らの言葉で話す、書くといったアウトプットとの往復作業を重要視しています。これにより、他者に伝わりやすい表現力や、留学生も含めて自分とは異なる背景を持つ他者への理解力が培われていくのです」
こうした「自分の意見の発信」が必要なのは、授業中だけではない。AIUでは、1年次は全員キャンパス内での寮生活。さまざまな経験・背景を持つ留学生も含めて、他者との共同生活では多様性への理解やコミュニケーション能力が日常的に不可欠だ。
「入学後、義務寮で過ごす初めの1年間は特に『ルームメイトを変えてほしい』といった要望が少なくありません。しかし、卒業して世界に出た時、自分と相容れない人はいくらでもいるはずです。では、そんな人と出会った時、その人を排除して自分と合う人とだけやっていけばよいのでしょうか?寮生活は、自分とは異なる他者を理解・尊重しながら折り合いをつけていく鍛錬。2年次以降も約9割が学生宿舎で暮らすAIUの学生たちは、共同生活で日々生じる仲間との摩擦の中で互いを高め合いながら人間力を磨き、確実に卒業後に役立つ財産を手に入れるのです」
英国の教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(Times Higher Education)」発表の「THE 日本大学ランキング2025」において、「国際性」の項目で第1位、「教育充実度」で第2位にランキングされているAIU。秋田市郊外の自然豊かな環境で、キャンパス内に学びと暮らしが一体となった、いわば「24時間リベラルアーツ」の実践の場となる環境は、どこにでもすぐ移動できる都市圏の大学ではなかなか実現できない濃密な学びの場となり、こうした高い評価につながっているのだ。
1年間の正規留学が必須なことも大きな特徴だ。単科大学であるAIUで所属するのは国際教養学部だが、留学先の提携大学では、それまでの学びを活かして自分が興味のある分野の学部に所属。取得した単位は、AIUの卒業に必要な単位に認定される。
提携大学は世界中の52の国と地域に及ぶ200校以上で、外交、地政学、教育制度、サステナビリティ(持続可能性)について学べる学部などさまざまだが、近年には起業について学ぶ学部を選ぶ学生も増加。他の国にも行きやすく、近隣の国々の文化を体験しやすいこともあり、約7割がヨーロッパを選ぶという。一方で、国として人材育成に取り組むことから、テンポが速くて評価が厳しいシンガポールの大学に挑戦する学生もいるそうだ。
留学先で世界の広さや多様性を体感できるのは言うまでもないが、日本人という自分のアイデンティティを見つめ直す機会としても重要だという。
「学生同士の気軽な雑談の中でも、日本の文化や習慣について問われる機会は多いもの。自国の文化を理解して、自分の言葉で説明する経験は、国内ではなかなか得られないものです。若いうちのこうした経験は、その後の人生を切り拓く大きな糧。帰国する頃には、専門分野の知識はもちろん、グローバルな視野と『世界の中の日本人としての自分』という軸を身につけ、大きく成長できるのです」

図書館は24時間365日開館。夜中でも課題に取り組む学生の姿が絶えない

学生の4人に1人が、世界50か国以上の協定校から集まった留学生

多数の外国語に関する教材や設備が充実した言語異文化学修センター

教員の半数以上が外国人で、少人数授業を展開している

キャンパス内に、1年次に全員入寮する学生寮と、2年次以上の学生や短期留学生が入居する学生宿舎が完備。写真は、共通のテーマに興味を持つ学生が暮らす「テーマ別ハウス」

メーカーや商社など、求人のために来校する大手企業も多く、希望者就職率は毎年ほぼ100%を誇る。また、進学者の多くは、海外の大学院に進むという
国際教養大学 副学長
熊谷 嘉隆 先生

教室でも寮でも、特に1年次は「相手が何を言っているのかわからない」「自分の言いたいことが伝わらない」の繰り返しで、戸惑うことばかりでしょう。しかし、「なぜ伝わらないのか?」「なぜ相手がこう言っているのか?」と試行錯誤する経験でこそ、机上の知識が血肉となり、国際社会でも使える知識やスキルとして身についていきます。
高校生には、多くの本を読むことをおすすめします。知識を得るのはもちろんですが、多読によって培った母国語の読解力は思考力の源になります。AIUで感じる「なぜ」を考えるうえで助けになるに違いありません。
国際教養大学
国際教養学部 4年 T.Tさん
1年間の留学が必修で、留学生との寮生活を通して異文化理解を深め、人間性を高めることができる点に魅力を感じ、国際教養大学を志望しました。入学後にEAP(English for Academic Purposes Program)という期間が設けられ、英語で学ぶための基礎力を養うことができたので、英語で行われる授業にも不安を感じずに取り組めました。
これまでの3年半で、学生団体の立ち上げやNPOでの長期インターン、イギリスのリーズ大学への留学を経験。未知の環境に臆せず挑戦する力や、予期せぬ事態が起きても冷静に対応する力がついたと感じています。

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