下のグラフ3で全国6地区ごとの志願動向を見ると、大都市圏を擁する関東・甲信越、北陸・東海、関西、九州が増加したのに対し、北海道・東北、中国・四国は減少。コロナ禍がほぼ終息したことから、大都市圏志向も強まり、「コロナ以前」の水準に戻ったといえる。近年の易化傾向を見越してチャレンジ志向が強まり、国公立大の後期縮小もあって、首都圏や京阪神の難関~準難関校への併願が増えた模様だ。
次に、下のグラフ4で学部系統別の志願状況を見てみよう。近年続いていた「文低理高」傾向が24年に一転、文系が人気復活。25年もその傾向は継続し、法、経済・経営・商の大幅増など、文系が軒並み人気アップ。就職事情の好転に加え、ここ数年の減少傾向の反動などが要因と見られる。一方、情報科学系の新増設が相次いだ理・工をはじめ、理系も概ね増加傾向のため、全体的に高水準の「文理均衡」となった。
ただし、医、薬が前年並み、農・水畜産・獣医も微増に留まり、相対的に「理系の資格志向」は弱まったといえる。
ここから、各大学の志願状況を見ていこう。表1では、志願者数(大学合計:4月中旬現在)の多い順に、上位20大学を示した。志願者数の合計は、全体(221大学:約300万5千人)の約54%と半数以上を占める。
特筆すべきは、初めて志願者数トップになった千葉工業大(14%増)。5年連続で共テ利用方式の受験料を免除、独自・共テ併用のSB日程で方式を複線化したことも要因と見られる。
表1以外の大学も含め、首都圏や京阪神の難関~中堅上位校では、チャレンジ志向の強まりから、志願者増が多数を占める。
【首都圏】難関~準難関校では、学習院大(13%増)・国際基督教大(32%増)・中央大(12%増)・立教大(11%増)が大幅増、青山学院大(8%増)・慶應義塾大(7%増)・東京理科大(9%増)・法政大(3%増)・明治大(6%増)・早稲田大(7%増)も増加。全体的に共テ利用方式の増加が目立つ。また、国際基督教大は一般A方式を3タイプに分割したことが人気材料になったと見られる。
一方、上智大(2%減)はやや減少。前年の志願者11%増と合格者絞り込み(6%減)による倍率アップの反動と見られる。
いわゆる「日東駒専」は、東洋大(11%増)・日本大(22%増)が大幅増、駒澤大(6%増)も増加したが、専修大(4%減)はやや減少した。日本大は前年の大幅減(23%減)の反動と見られる。
【京阪神】いわゆる「関関同立」のうち、関西大(10%増)が大幅増、関西学院大(7%増)・同志社大(3%増)も増加したが、立命館大(1%増)は微増に留まった。関西大は情報系学部増設と前年の反動、関西学院大は共テ利用1月出願の新方式導入(情報必須の8科目型、理系4学部で3教科型)が志願者増の要因と見られる。
また、いわゆる「産近甲龍」では、甲南大(37%増)が2年連続で大幅増、京都産業大(4%増)・龍谷大(6%増)・近畿大(7%増)も増加した。甲南大は一般前期の試験日程繰り上げ、逆に一般中期の繰り下げなどが主な要因と見られる。
表2では、志願者1,000人以上で、構成する全学部が志願者数を発表した大学について、増加率が高い順に上位20大学を示した。
このうち13大学で前年の志願者減や倍率ダウンの反動がベースにあり、さらに入試の変更や学部・学科増設などが複合的に作用した結果といえる。例えば増加率トップの実践女子大は、学部増設、1月下旬の試験日程新設、そして前年の合格者大幅増による倍率ダウンの反動が、志願者が約3.5倍に膨れ上がる要因となった。
注目したいのが、前述の「受験料定額制」導入だ。表2では、桜美林大・東京工科大・立正大が該当し、受験生の経済負担軽減につながるため、いずれも爆発的な志願者増の要因となっている。
また、甲南大・京都橘大は共テ併用方式の新規実施、國學院大・実践女子大・東京工科大・日本大は英語外部検定利用の導入・拡充が、大幅増の一因となっている。
この他、名古屋葵大(旧:名古屋女子大)の大幅増は、共学化の成功例として注目される。
ここまで紹介した大学以外について、各地区の志願状況を見てみよう。
準難関~中堅上位校では、國學院大(21%増)・武蔵大(11%増)・明治学院大(32%増)の大幅増が注目される。準難関校に次ぐクラスの目標校として人気を集めた模様。獨協大(9%増)・成蹊大(4%増)も増加したが、前年の反動か、成城大(9%減)は減少した。また、女子大上位校では日本女子大の11%増に対し、津田塾大は4%減、東京女子大(24%減)は大幅減となった。
理工系中心の大学では、千葉工業大の他、工学院大(15%増)が大幅増、芝浦工業大(9%増)・東京電機大(4%増)・東京都市大(3%増)・東京農業大(7%増)も増加した。
中堅校では、亜細亜大(20%増)・東京経済大(18%増)が大幅増、大東文化大(6%増)も増加。一方、神奈川大(13%減)は大幅減、拓殖大(7%減)・玉川大(6%減)も減少した。また、女子大では昭和女子大(13%減)・東京家政大(28%減)の大幅減、大妻女子大(5%減)・共立女子大(4%減)の減少に対し、学習院女子大(20%増)の大幅増が目立つ。26年に予定される学習院大との統合を見据えた「先物買い」として、24年に続き人気を集めたようだ。
主な女子大では、甲南女子大(33%増)の大幅増、同志社女子大(7%増)の増加に対し、京都女子大(21%減)が大幅減、神戸女学院大(7%減)・武庫川女子大(7%減)も減少と明暗が分かれた。
また中堅校では、京都橘大(36%増)・追手門学院大(10%増)・大阪経済大(13%増)・関西外国語大(26%増)・神戸学院大(20%増)が大幅増、大阪工業大(4%増)・桃山学院大(7%増)も増加。一方で、大阪経済法科大(13%減)・大阪産業大(28%減)・摂南大(28%減)は大幅減となった。
国公立大との併願が多い各地域の主要大学のうち、北海学園大(11%増)・中京大(10%増)・岡山理科大(12%増)・九州産業大(14%増)・西南学院大(14%増)が大幅増、愛知大(7%増)・南山大(2%増)・名城大(8%増)・福岡大(9%増)も増加した。一方で、広島修道大(20%減)は前年の55%増の反動から大幅減、東北学院大(5%減)も減少した。
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