
いよいよ受験勉強も大詰め。気になるのは志望校や併願校の難易度や志望動向だ。新課程2年目に入り、共通テストの出題レベルの変化、前年の入試結果、新増設、入試方式や日程の変更、負担の増減…。さまざまな要素によって変動する、2026年一般選抜のゆくえを、『螢雪時代』編集部が大胆に予測する。
ここでは高校・予備校の進路指導のベテラン先生方へのアンケートを参考に、さまざまな変動要因を総合し、2026年(以下、26年。他年度も同様)一般選抜の動向を予測する。
『螢雪時代』編集部推定によると、25年は4(6)年制大学の受験生数(以下、大学受験生数)が24年より3.2%増加した模様。26年の大学受験生数は、編集部推定で68万2千人と、前年より1.6%増加するものと見られる。

それでは、大学入学共通テスト(以下、共テ)の出願者数はどうなるか。
共テは23~25年と3年連続で易化。新課程2年目の26年は、過去の事例から出題レベルの調整が行われる見込みで、特に国語、英語リーディング、「公共、政治・経済」、情報Ⅰは難化が予想される。各大学の独自入試と対策の違いが大きい私立大専願者の「共テ離れ」が進みそうだ。また、強い現役志向から、学校推薦型選抜(以下、推薦型)や総合型選抜(以下、総合型)で、早期に合格したい受験生の増加も共テ離れに結びつく。26年からのWeb出願の導入で高校側の関与が弱まることも影響しそうだ。一方、家計不安から、共テ受験が必要な国公立大の人気は根強い。
こうした要素を考えあわせ、26年共テの出願者数は、受験生数の増加にもかかわらず、前年とほぼ同じ49万5千人前後と予測する。
26年入試は、現役生の出願傾向は基本的に「初志貫徹」の見込みだが、共テの難化が予想されるため、やや慎重出願になりそう。そして、前年の入試結果(志願者増減や倍率アップダウン)の反動も強く作用する。25年に高まった公立大人気の反動が予想される。
アンケート回答では、国公立大志向について「変わらない」が多数派ながら、「やや強まる」が倍増したのが注目される。新課程共テ対策が進んだこともあるが、女子枠など推薦型・総合型の拡大を念頭に置いた回答とも見られる。後期・中期の募集枠縮小で「最後まで粘る」戦略が難しくなり、条件がそろえば第1志望を「推薦型・総合型→前期」で勝ち取る併願に変わりつつあるようだ。
新課程入試も2年目に入るが、共テも2次も25年と同じ科目指定や配点の扱いがほとんど。その中で、次の変更が注目される。
北見工業大の前期で共テの情報Ⅰを「選択→必須」とし、富山県立大は前・後期とも必須で追加。北海道大は前・後期、高知大も人文社会科学(社会科学)・教育の前期と農林海洋科学の前・後期で、共テの情報Ⅰを配点化する。
【新増設】
26年の主な新増設・改組を図表2に示した。文理融合の情報科学系の新設が目立つ。特に、学内の既存の学部等が連係する「学環」を新設する佐賀大・熊本大が注目される。また、複数学科を1学科か、より少数の学科に統合する学部も、北見工業大‐工、信州大‐工、山口大‐工、九州工業大‐工・情報工、名古屋市立大‐芸術工、兵庫県立大‐工など、工学系で目立つ。
【定員】
埼玉大‐教養・工、京都大‐工、岡山大‐農など、主に理系で定員増が相次ぐ。一方、山形大‐教育、埼玉大‐教育、熊本大‐教育など教員養成系で定員減が目立つ。
【女子枠】
男子比率が高い理工系学部の推薦型・総合型への「女子枠」設置が続く。26年は岩手大・山形大・埼玉大・京都大・大阪大・広島大・愛媛大・公立小松大で新設、新潟大・金沢大・名古屋大・高知工科大で募集枠を拡大。

一般選抜の募集枠の変更を見てみよう。
【日程変更】
旭川医科大‐医(医)、山形大‐教育・医(医)、群馬大‐共同教育、広島大‐法[昼・夜]・生物生産、佐賀大‐医(医)、和歌山県立医科大‐保健看護などで後期を募集停止。教員養成と医で後期縮小が目立つ。
【募集人員】
兵庫県立大‐工で募集人員の比率を「後期→前期重視」に転換。一方、愛媛大‐工は「前期大幅減、後期大幅増」、前橋工科大も「前期大幅減、中期大幅増」に変更。
科目等の変更を見てみよう。25年に比べ、目立った変更は少ない。
【共テ】
信州大‐教育の前・後期で「コースにより4~8科目→全コース8科目」に統一。一方、北見工業大の後期で7→5科目、島根県立大‐看護栄養の前期で5→4科目に軽減。
【2次】
滋賀大‐教育の後期で2次に「入学後の学修計画・志望動機書」を追加。一方、九州大‐文の後期で志望理由書を除外。周南公立大‐情報科学の前期の2次で小論文を除外。
【2段階選抜】
弘前大‐医(医)、東京大‐理科三類、東京科学大‐理工学系の前期、前橋工科大の中期、奈良県立医科大‐医(医)の後期で予告倍率を引き締める。また、岡山大‐医(医)の前期で予告倍率に得点条件を追加。一方、お茶の水女子大が全学の前・後期で、香川大‐医(臨床心理)も前期で廃止。長崎大‐医(医)の前期、横浜市立大‐理の後期などで予告倍率を緩和する。
【学費等の増減】
高知工科大で後期の受験料を「1万5千円→5千円」に減額。一方で、埼玉大・名古屋工業大・山口大が学費を増額(年額53万5,800円→64万2,960円。ただし夜間主コース・課程は各半額)する。
以上の点も踏まえると、26年国公立大一般選抜の志願者は「前年並み」と見込まれる。
アンケート回答では、私立大志向は25年に比べ「やや強まる」が減少。25年に難関~中堅上位校で目立った合格者絞り込みのため、「チャレンジ志向」がやや弱まることを物語る。
共テが難化した場合、国公立大受験者層は安全志向から、主に共テ利用で難関私立大の併願を増やす見込み。一方、私立大専願型の成績上位層は「チャレンジ志向」がやや弱まり、中・下位層は中堅校の推薦型・総合型で早く確実に決める傾向が定着。
そこで新たに影響しそうなのが、併願可能な「学力試験型」推薦型・総合型だ。25年度に首都圏で大東文化大・東洋大などが導入した「学力試験型」は、ここで合格を確保し、さらに上位校の一般選抜に挑戦するステップとして定着するか注目される。26年度の新規実施はいずれも中堅校のため、影響は限定的だが、不合格者が一般選抜に再挑戦で流入する可能性がある。
【学力試験型の余波】
25年度は「学力試験型」推薦型・総合型の実施時期が論議の対象となった。その結果、文部科学省の「令和8年度大学入学者選抜実施要項」で、2月1日以前に学力試験を実施する場合、小論文・面接や提出書類など他の評価方法との組み合わせを条件に可能となった。その影響を受けたのが、以前から「学力試験型」を行ってきた関西地区。京都産業大・龍谷大・近畿大など、多くの大学で志望理由書・自己推薦書等の事前提出の導入が相次いだ。
25年入試では、難関~中堅上位校で、志願者増の一方で合格者が絞り込まれ、実質倍率(受験者数÷合格者数。以下、倍率)が軒並みアップ(図表3)。26年入試も同じ傾向が続くと見られるが、「志願者増・合格者減」が顕著だった大学は、その反動が見込まれる。

25年は合格確保校を推薦型・総合型で押さえるケースが増えたため、一般選抜自体は「凸型」の出願パターンとなった模様。26年はチャレンジ校へ目配りしつつ、合格確保校も押さえる「十字型」の出願パターンに戻りそうだが、実力相応校で学内併願を増やすことが想定され、横広の十字型になりそうだ。
【実施方式】
東京理科大は共テ利用A方式を4タイプに分割する一方、C方式・グローバル方式を廃止。また、成城大で共テ利用N方式、東海大で共テ利用中期を導入する。
【共テ併用化】
明治大‐経営の学部別入試が、独自入試から、独自入試と共テの成績を組み合わせる「共テ併用方式」に全面移行する。
【情報必須の科目増】
私立大の共テ利用方式では、情報Ⅰは「選択」「課さない」がほとんどだが、必須とする方式も微増。早稲田大‐教育のC方式(独自・共テ併用)で共テを7→8科目、法政大の共テ利用C方式で6→7科目、豊田工業大の共テ利用A方式で7→8科目に増やし、いずれも情報Ⅰを必須で追加する。
【実施方法】
愛知大で独自入試を、受験必須のスタンダード方式(3科目)を軸に他の3方式でも判定可とする形式に変更。
【新方式】
北海学園大で全学部統一型入試、神奈川大で全学統一型を新規実施。立命館大の学部個別配点方式で、独自作問の情報が必須の「情報型(文系・理系)」を新規実施する。
【試験日程】
医学部では、獨協医科大・杏林大・北里大・金沢医科大(前期)・関西医科大・川崎医科大が、1次試験を1~2週間程度繰り下げる。杏林大‐医(1/23→2/2)は日本医科大の前期と、北里大‐医(1/31→2/3)は順天堂大‐医(A・B)と、川崎医科大(1/26→2/1)は久留米大‐医(医)の前期と重複。一方、関西医科大‐医(医)の前期は「1/25→1/31」に繰り下げ、近畿大‐医の前期との重複が解消する。
【英語外部検定利用】
独自試験や共テの英語の代わりに(または併用し)、英語外部検定を利用できる大学・学部が増加。日本大‐法・スポーツ科学・生産工・松戸歯のA個別方式、立正大の2月前・後期、3月試験、神奈川大の一般前・後期で利用可能になる。
分野別では、理工系、特に情報科学系の学部増設が目立ち、次いで看護・医療系も多い。特に、中央大‐理工の3学部(基幹理工・社会理工・先進理工)への分割が注目される。
女子大の共学化と名称変更が相次ぐ。女子栄養大(日本栄養大に改称予定)、岡崎女子大(岡崎大に改称予定)、京都光華女子大(京都光華大に改称予定)が全学で共学に移行。東京家政学院大‐現代生活・人間栄養、太成学院大‐看護も共学化し、全学が共学となる。また、学習院女子大は学習院大と統合し、学習院大‐国際文化交流として共学化する。
【特待生】
共立女子大が全学統一方式でスカラシップ奨学金制度を新設。東海大も全学部統一選抜前期で特待生奨学金を導入する。
【受験料割引】
北海学園大は3種類の併願割引制度を導入。亜細亜大・摂南大では共テ利用入試で併願割引制度を導入。また、日本女子大では独自入試・共テ利用方式ともに、愛知大も独自入試で併願割引制度を拡充する。
以上の変動要因から、私立大一般選抜全体の志願者数は3%程度の増加と予測する。
25年に続き、文、国際・外国語、経済など文系学部が人気を維持する一方、教員養成系の伸び悩みは続きそう。理系では、理・工・農の志願者増が見込まれる。特に、米不足など食料関連の報道から、農は注目度大。情報科学系は相次ぐ新設や定員増の規模に志願者増が追いつかず、志願者は分散しそう。また、医・薬や看護・医療は引き続き、歯も高倍率化の反動で人気低下が予想される。
「大予測!2025年一般選抜の難易変動はこうなる!? PART 2 地区別予測」では、全国各地区の主な国公立大・私立大について、26年一般選抜の変動要因を紹介、志望・難易動向を予測している。志望校・併願校選びの参考にしてほしい。

Aでは、国公立大志向は「変わらない」が大多数を占めた昨年と異なり、最多は「変わらない」ながら、「やや強まる」が倍増した。一方、Bの私立大志向は昨年と同じく「変わらない」が多数派だが、「やや強まる」が減った。新課程2年目で共テ対策が進み、物価高など家計不安もあって国公立大志向が強まった模様。ただし、ここでの「国公立大志向」は女子枠など推薦型・総合型も意識していると見られる。また、私立大については「チャレンジ志向」がやや弱まったことを捉えた回答結果と見られる。その結果、Cでは併願校数を「25年とほぼ同じ」とする回答が多数ながら、「やや増える」が増加。25年の私立大難関~中堅上位校で合格者絞り込みが目立ったことへの警戒感がうかがえる。
Dでは「やや増加」が多数派で、「年内入試人気」の強さをうかがわせる。国公立大の場合、定員増が推薦型・総合型の募集枠拡大につながることも要因で、特に理系学部の女子枠について、希望者は積極的に活用させる方向に進路指導が変化しているという。私立大の場合、首都圏における「学力試験型」の増加も要因だ。
この続きを読むには
に登録(無料)が必要です
さらに旺文社のサービスで
この他にも便利な機能が!
詳しくはこちら




