次に、私立大一般選抜の合格状況を見よう。中でも倍率の変化は、「難化・易化」を測る物差しとなる重要データだが、一般的に使われる「倍率」には次の2通りあることに注意したい。
*志願倍率=志願者数÷募集人員=見かけの倍率
*実質倍率=受験者数÷合格者数=実際の倍率
私立大では合格者の入学手続率を考え、独自入試で募集人員の5倍~10倍、共テ利用方式では10~15倍の合格者を出すのが普通だ。
グラフ5で関西学院大‐工の例を見てみよう。一般入試(全学部日程)の志願倍率は19.5倍だが、合格者(補欠合格を含む)を募集人員の7.4倍出しているので、実質倍率は2.6倍となる。また、共テ利用入試(1月出願)の志願倍率は65.0倍もの超高倍率だが、合格者を募集人員の30.6倍も出しているので、実質倍率は2.1倍に収まった。これなら「とても手が出ない」という倍率ではないだろう。
見かけの倍率に惑わされることなく、実際の倍率を志望校選びのデータとして活用しよう。
『螢雪時代』が私立大一般選抜(主に2月入試)の受験・合格状況についても調査したところ、136大学の集計(4月中旬現在)では、受験者数(未公表の場合は志願者で代替)の7%増に対し、合格者数は4%減のため(グラフ6)、実質倍率(以下、倍率)は24年2.8倍→25年3.1倍にアップした。
入試方式別に見ると、共テ利用方式(併用方式を含む)の「受験者11%増、合格者4%増」に対し、独自入試の方が「受験者5%増、合格者9%減」と合格者の絞り込みが顕著だった。
また、地区別の集計では首都圏(3.2倍→3.7倍)、京阪神(2.9倍→3.1倍)、その他の地区(2.2倍→2.4倍)といずれもアップしたが、特に首都圏の倍率アップが顕著だった。
こうした倍率アップと合格者減については、次のような要因が考えられる。
以下、主な大学で倍率が目立って変動したケースを紹介する(*は「志願者÷合格者」、その他は実質倍率。主に2月入試の集計)。
(1)倍率アップ 亜細亜大1.7倍→2.2倍、慶應義塾大4.2倍→4.5倍*、国士舘大2.6倍→3.0倍、東京農業大2.8倍→3.6倍、東洋大3.2倍→4.1倍*、武蔵大3.5倍→4.8倍、明治学院大2.6倍→3.8倍、早稲田大5.5倍→5.9倍、愛知淑徳大2.0倍→2.4倍、中京大2.4倍→2.9倍*、京都橘大2.8倍→3.9倍、佛教大2.8倍→3.7倍、大阪経済大3.0倍→5.0倍、関西大3.8倍→4.0倍、関西外国語大2.1倍→2.4倍、関西学院大2.7倍→3.1倍、神戸学院大1.8倍→2.5倍、西南学院大3.0倍→3.7倍、福岡大2.5倍→2.8倍
(2)倍率ダウン 上智大4.5倍→4.0倍、東京経済大3.2倍→2.8倍、京都女子大2.0倍→1.4倍、追手門学院大3.8倍→3.4倍、摂南大2.7倍→2.1倍
倍率アップの大学が多数派で、倍率ダウンの大学は少数に留まっている。
このうち、早稲田大は受験者7%増に対し、合格者はほぼ前年並み。また、関西学院大は受験者7%増に対し合格者4%減。さらに、西南学院大は受験者13%増に対し合格者9%減と絞り込み、いずれも倍率アップで難化したと見られる。果敢にチャレンジしたが、厳しい結果に終わった受験生も少なくなかったようだ。
一方、上智大は受験者2%減に対し、合格者10%増で倍率ダウン。また、東京経済大は受験者18%増に対し、さらに合格者を37%も増やしたため、かえって倍率ダウン。いずれもやや易化した模様だ。
受験生の中には、ふだん「1点の差」を気にも留めない人がいるだろう。しかし、入試本番ではその「1点」が大切なのだ。
グラフ7に、関西大-商の2月一般入試(全学日程1・2の合計)の25年入試結果から、合格ライン付近の上下10点幅の人数分布を示した。受験者5,997人、合格者1,146人で倍率は5.2倍。合格最低点は450点満点で285点(得点率63.3%)だった。
注目すべきは、最低点を含めた「上10点幅」の部分で、ここに合格者全体の約25%が集中する。最低点ぴったりのボーダーライン上にいるのは38人。高校のほぼ1クラス分の人数だ。わずか1点差での不合格者も37人(やはり約1クラス分)、10点差以内の不合格者は346人もいる。合格ライン付近は、同じ得点帯の中に、多くの受験生がひしめき合っているのだ。
たった1つのケアレスミスが命取りになり、合否が入れ替わるのが「入試本番」。ふだんの勉強から解答の見直しを習慣づけよう。
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「螢雪時代(2025年6月号)」
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