東洋大学 社会学部 社会心理学科 教授
尾崎 由佳 先生
おざき・ゆか◎東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。専門は心理学・社会心理学。セルフコントロールや自己制御について詳しい。著書に『自制心の足りないあなたへ-セルフコントロールの心理学-』(ちとせプレス)等。
スマホは刺激の塊です。光る・音がする・カラフル。さらに、次々と新しい情報が入ってきます。こうした刺激は脳の快楽中枢に作用し、「楽しい」「気持ち良い」といった感覚を脳に学習させます。すると、学習した脳はもう一度その快楽を得たいと、刺激を欲するようになってしまいます。この状態が、いわゆる“依存”です。人間の脳はどうしても刺激を快楽と感じてしまうので、スマホに簡単に依存してしまいます。
望ましいもの(大きな目標の達成)と望ましくないもの(目の前の誘惑)、2つの相反する気持ち・葛藤がある中で、望ましいほうを選択すること。たとえば、「合格したい」と「遊びたい」で葛藤が生じた時、「合格したいから、勉強する」を選べること。
目の前の誘惑(遊びたい気持ち)よりも、目標(志望校合格)のほうが魅力的なんだと自分に思わせる!
誘惑を選ぶデメリット(罪悪感が生まれるなど)や対価(勉強時間の減少など)について、冷静に考える!
遠すぎる目標(数か月後の入試)より、目の前の課題(その日の学習目標)のほうが、現実的&達成しやすい!
日々の課題達成で「自分は誘惑に負けないんだ!」という気持ち(=自己効力感)を育てると、次回の成功率も上がる!
“誘惑に負けても良い時間”を設定しておくと、それに向けて頑張れる!メリハリもついて、リフレッシュにもなる!
Q 成績の良い友達のSNS投稿を見て、自分と比較して落ち込んでしまいます……。
A 人と比べるのをやめましょう。状況や環境が違うのですから、他人との比較は意味がありません。比較するとしたら、過去の自分。もしくは「あの子のようになるには、どうしたらいいか」を考えたり直接聞いて、マネしてみましょう。「手が届くかも」と思うとマイナス思考にはなりませんし、勉強法をマネすることで成績が上がるかもしれませんよ。
Q 友達に嫌われるかもしれないと思って、LINE等でのやり取りがやめられません……。
A 若い人にありがちな悩みです。嫌われたくないと思って、他人に対して気を遣いすぎたり遠慮しすぎていませんか?勇気を出して「私は集中したいから、わかってほしい」と、理解を求めてみましょう。しっかり気持ちを伝えることで、かえって絆が深まるはずです。もちろん、自分が友達を理解する努力も、惜しまないように。
Q 我慢しようと思っていたのに、すぐスマホを触ってしまい、自己嫌悪に……。
A 我慢を続けるのは難しいことです。1回でも「誘惑に負けた=失敗」と捉えてしまうと自己嫌悪に陥りますし、「もうどうにでもなれ!」と努力をやめたくなることもあるでしょう。大切なのは、1回失敗したからといって諦めないこと。またやり直せばいいんです。小さな成功体験の積み重ねが自己効力感を上げ、より意志を固くしてくれますよ。
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