新課程初年度となる2025年の共通テストや国公立大2次試験、私立大一般選抜、学校推薦型・総合型選抜が行われた。その結果はどうだったのか、そして2026年はどうなるのかについて、受験のプロである城田 高士さんに教えていただいた。
駿台予備学校の東大専門校舎・医学部専門校舎や現役生専門校舎などで、長年にわたり進路指導を担当。多くの受験生を第1志望の難関大学に送り出してきた。校舎責任者を経て現職。豊富な指導経験も踏まえた入試情報の発信を行っている。
2025年は新課程初年度ということもあり、共通テストの平均点アップが目立ちました。科目別に見ますと、国語(対前年:+10.17点)、数学ⅠA(同:+2.13点)、英語リーディング(同:+6.15点)に加え、科目構成が大きく変わった「歴史総合,世界史探究」(同:+5.84点)、「公共,政治・経済」(同:+18.31点)などでアップしました。特に国語は第3問に「実用的な文章」が新設されて大問数が5問に増えましたが、大部分が4択の設問になったこともあり、前年より易化しました。また、英語リーディングは素材文の語数が前年より約700語減り、該当箇所を特定する際の複雑さが減少したことなどから易化。
一方、平均点ダウンとなった科目は、数学ⅡBC(同:-6.18点)、化学(同:-9.43点)、英語リスニング(同:-5.93点)のほか、科目構成が大幅に変わった「地理総合,地理探究」(同:-8.26点)などでした。なお、新科目として注目されていた「情報Ⅰ」の平均点は69.26点と高くなりました。プログラミングなど高校の学習を中心に対策してきた受験生には取り組みやすかったようです。
以上の結果、主要科目である国語、数学ⅠA、英語リーディングの平均点アップが大きく影響し、全体の6教科1000点満点の最終予想平均点※1は、文系620点(同:+24点)、理系633点(同:+12点)とアップしました。
※2025年共通テストの「数学Ⅰ,数学A」は数学ⅠA、「数学Ⅱ,数学B,数学C」は数学ⅡBCと略記。
※1 駿台・ベネッセ・河合塾の推定(地歴・公民は合わせて1教科)。平均点差は、前年の5教科900点満点の平均点を1000点満点に換算して算出。
2025年の共通テストは、複数の資料や図・グラフなどを読み取って考察したり、学んだ知識を日常的な場面で活用したりするなど、思考力・判断力・表現力を問う出題が従来に比べて増えました。科目別に出題の特徴を見ますと、国語は第3問に「実用的な文章」が加わり、この大問に複数テキストや言語活動の設問が集約されました。逆に、第1・2問は単一テキストの出題となり、全大問で大部分が4択の設問となったため、受験生は取り組みやすかったようです。一方、英語リーディングは、複数の資料を読んで論拠を整理する問題や、論理構成に配慮して文章を訂正する問題が新登場。英語リスニングは、講義全体を理解する必要がある問題や、放送文からの言い換えに注意が必要な問題も見られ、難化しました。数学ⅡBCは、第2問「指数関数・対数関数」で初めて常用対数表を利用する問題が出題され、第7問は「複素数平面」のみから出題。化学は問題文が長く読解力を要し、与えられた条件から段階的に考える問題や計算問題が増えました。
2025年共通テストの平均点はアップしましたが、自己採点集計の目標ラインが上がったことや、現役志向・安全志向の高まりから、国公立大2次試験は慎重な出願が顕著に見られました。設置者別に2025年志願者数の前年比を見ますと、国立大は前期1%増・後期1%減となったのに対し、公立大は前期4%増・中期6%増・後期3%増と全日程で増加し、公立大の人気が伺えました。また、難関国立10大学について、2025年の前期志願者数の前年比を見ますと、北海道大(1%増)、東北大(4%増)、名古屋大(3%増)、京都大(4%増)、神戸大(1%増)で増加した一方、東京大(11%減)、東京科学大(7%減)、一橋大(2%減)、大阪大(1%減)、九州大(1%減)では減少しました。特に東京大の志願者減の要因は、理科三類以外の5科類で2段階選抜の予告倍率を引き締めたことや、学費の増額が考えられます。また、東京科学大の志願者減は、総合型選抜に女子枠を新設し、募集枠を縮小した工学院(前期)の志願者12%減も影響しています。
東京大や東京科学大など首都圏の難関大から、東北大や準難関大(千葉大、横浜国立大、東京都立大)に志望変更をした人も少なからずいたようです。
2025年一般選抜で志願者数が増えた大学が目立ちました。これは現役志向・安全志向による併願校数の増加などが要因と考えられます。また、共通テストの平均点アップに伴う目標ライン上昇も、併願校の増加を加速させました。難関大では、慶應義塾大(7%増)、早稲田大(7%増)をはじめ、学習院大(13%増)、中央大(12%増)、立教大(11%増)、関西大(10%増)、東京理科大(9%増)、青山学院大(8%増)、関西学院大(7%増)、明治大(6%増)、法政大(3%増)、同志社大(3%増)、立命館大(1%増)と軒並み志願者が増加。明治大は難関国立大志望者の併願先としての人気が継続し、4年連続増。入試方式別では、独自入試よりも共通テスト利用入試での増加が目立ちました。この方式は受験料や試験対策の負担が軽いこともあり、早稲田大(97%増)、日本大(48%増)、甲南大(34%増)などで大幅増。早稲田大は社会科学部・人間科学部で独自入試から共通テスト併用入試に変更したことも志願者増の要因と言えます。
2025年度に志願者増の大学が目立った要因は以下の点が考えられます。①新課程入試初年度への不安から、早期に合格を決めたいという現役志向の高まり、②国公立大の後期廃止・縮小等による、学校推薦型・総合型選抜の募集人員の拡大、③理工系・情報系の女子枠の拡大。国立大※では、東北大(総合型:7%増)や、一般後期を廃止した京都工芸繊維大(総合型:30%増)、女子枠を導入した滋賀大(推薦型・総合型:48%増)などで増加。私立大※は慶應義塾大(総合型:16%増)、早稲田大(総合型:25%増)など難関大でも増加。
※2024年12月25日現在の旺文社調べ(国立大は共通テストを課さない方式)。
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