「受験は団体戦」と言われる。クラスメイト・友人、先生や家族とともに大学受験を乗り切ることに、どういったメリットがあるのか。厳しい受験期を周囲と一体になって乗り切る生徒たちを毎年目にしてきた堀浩司先生に、受験に団体戦で臨むべき理由を伺った。
編集協力◎笹原風花
螢雪アドバイザー
堀 浩司 先生
龍谷大学高大連携推進室フェロー。滋賀県の公立高校(守山高校、草津東高校など)で進路指導部長、SGH推進室長等を務め、数多くの生徒を志望校合格に導いてきた。担当教科は国語。2009年度文部科学大臣優秀教員として表彰を受けた。
休み時間、A:授業でわからなかったことを教え合うのが当たり前のクラス、B:昨日観たTVドラマの話で盛り上がるクラス。A:黒板をきれいにし、教科書を開いて授業開始を待つクラス、B:単語を覚える生徒を「マジメかよ!?」と茶化すクラス。あなたは、どちらのクラスに身を置きたいですか?雰囲気のいいAなら気持ちが自然と勉強に向くでしょうが、Bではかなり意識しないと前向きな気持ちを保てません。
人は周りの環境の影響を受けやすいものです。「自然と」なら続きますが、「無理して」は長続きしません。みんなで頑張る「いい雰囲気」が、あなたをそっと前に押してくれるのです。休み時間や昼休みに楽しみながら教え合う雰囲気が生まれると、教えられる側だけでなく教える側の知識も整理され、結果、両方の学力が高まるという効果もあります。
受験が「個人戦」なら、不安やプレッシャーと闘うのは自分独り。合格を勝ち取っても、喜びを分かち合えません。一方、「団体戦」ならどうでしょう?わからないところは周りの誰かに訊ける。不安なときには相談できる。合格したら、みんながいっしょに喜んでくれる。孤独に闘うより、みんなで闘うほうが、しんどさが軽くなるのではないでしょうか?
団体戦とは、群れて馴れ合うことではありません。傷をなめ合うことでもありません。つらさや不安を口にしたり、相談に乗ったりできる雰囲気を保ちつつ、目標に向けてひたむきに頑張っているお互いをリスペクトすることです。受験はストレスフルで、想像以上に大きな精神的負荷がかかります。「闘っているのは自分独りではない、みんなで頑張っているんだ」という一体感が、ストレスを軽減し、気持ちを前に向けてくれるのです。
今年も箱根駅伝を戦い終えた多くの選手が、「仲間に襷(たすき)をつなぐために頑張った」「チームメイトや沿道の応援のおかげで力を出せた」と、仲間の存在や応援の力を口にしていました。苦しくて心折れそうになったとき、ともに闘う仲間の存在が勇気をくれるのでしょう。人は自分のためだけでなく、誰かのために頑張るとき、思わぬ力を発揮します。応援してくれる人に報いたいと思う気持ちは、大きなエネルギーになるのです。何不自由なく受験勉強に専念できる環境を用意してくれている家族、同じクラスや部活動の仲間、学校の先生、先輩、後輩…。応援してくれているすべての人の想いを背負ってあなたは受験に臨みます。周りの応援は強い追い風になります。
私の好きなアフリカのことわざを紹介します。「早く行きたければ独りで行け。遠くまで行きたければみんなで行け。」
誠実でひたむきな姿で
「プラスの存在感」を示す
他人と交流して協力関係を築くのが苦手、言いたいことをうまく伝えられないなど内向的なタイプの人は、「団体戦の雰囲気を盛り上げよう」と無理して周りとコミュニケーションをとる必要はありません。黙々と受験勉強に取り組むあなたの姿が、「あいつ頑張っているな」と誰かのやる気を刺激すれば、いい雰囲気が醸成されます。黒板消しを手伝ったり、教室掃除も手を抜かず丁寧にしたり、誠実な態度を示すことで、団体戦メンバーとしての「プラスの存在感」につなげましょう。
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