
気候変動やさまざまな格差、武力衝突……。
新たな、そして簡単には正解を見いだせない課題が次々と現れる社会において求められる「学ぶ力」。
在学中だけではなく、社会に出てからも、自ら学び、それを力に変えていく。
そんなスキルを磨ける大学のプログラムを紹介する。
情報・写真提供◎東北大学・国際教養大学
編集協力◎株式会社エディキューブ


「東北大学グローバルリーダー育成プログラム※」(以下、TGLプログラム)という名称から、どんな内容の授業をイメージするだろうか。たとえば、語学能力に長けていて、自分の意見をきちんと発言できる人材……。もちろんこれらもグローバルリーダーの資質だが、グローバルラーニングセンター長の末松 和子先生は、このプログラムではそれ以外にも重視していることがあるという。
※全学部生対象の任意のプログラム
まず、自分の専門分野における、ある程度の知識やスキル。これは、専門分野の教育・研究に定評のある東北大学の学びの中で培われるものだ。
「そのうえで、TGLプログラムで重視しているのは国際教養力と行動力です。これは、まず世界で何が起こっているかを幅広く知ることが重要ですが、知るだけでなく、多角的な視野で物事を捉えてよしあしを判断し、決定できる力を意味しています。さらに、頭で考えているだけでは世の中は変わっていきませんから、授業の中に行動力を培えるような内容のものも盛り込んでいます」
その代表格が「国際共修」と呼ばれる学習形態だ。日本人学生と外国人留学生が同じ教室で学び、異なる文化的背景や価値観を持つ仲間と一緒に自分の考えを深め、伝え、協働する力を磨くもの。この形態そのものは全国の大学に広がっているが、東北大学はその先駆的な取り組みを大規模に展開してきた実績があり、2026年度は実に108科目と、国内最大級の授業を開講している。
「国際共修の形態の授業では、日本人学生と留学生が協力しなければ達成できない課題をあえて設定しています。たとえば、過去には『学内の国際化をさらに推進するためのプロジェクトを企画する』という課題に、日本人学生3人と留学生3人の6人グループで取り組むこともありました」
この例では、まずは学内の留学生を対象に、生活の中で不便に感じていることなどをアンケートやインタビューで調査。その結果をもとに企画を練り、大学側との調整も学生自身が行って実際にイベントを開催した。留学生の立場に立って考え、互いに意見を出し合いながら内容を決定するなど、学生が自ら主体となって、留学生と協働するという実践的な学びを経験するわけだ。
TGLプログラムでは前述のような「語学力・コミュニケーション能力」「国際教養力」「行動力」養成に加えてもう1つ、必修として重視しているのが「海外研鑽(けんさん)」だ。
そのために大学で提供されるプログラムは、海外の協定校で単位を取得する1年間の交換留学から、3か月未満の短期のものまでさまざま。短期でも、教員が引率して現地での調査や見学なども行う専門性の高いプログラムや、海外協定校のサマープログラムに参加するものなど、内容は多種多様だ。
「最短で2週間のものもありますが、出発前に事前研修でしっかり準備し、帰国後は振り返りも行い、期間は短くとも海外での経験を余さず学びに活かす、密度の濃いものです」

TGLプログラムには多様な学部から学生が集まり、仲間と切磋琢磨しながらグローバルスキルを磨いていく

国際共修の授業では留学生と一緒にプロジェクトを企画する。その一環として、実際に地域の夏祭りで国際色豊かな出店を企画・運営する

TGLプログラムは東北大学の全学部生が対象。入学後から2年次前期までに必修科目「グローバルゼミ」を受講後、全学教育科目や各学部の専門科目の中から、国際共修の授業などTGLプログラムの指定科目を自由に選んで履修していく。この指定科目と、海外研修プログラムなどへの参加によって、卒業に必要な単位とともに「TGLポイント」が獲得できる。「一定の『TGLポイント』を集めたうえで、語学スコアと成績要件を満たした学生には、認定審査を経て『グローバルリーダー認定証』が授与されます。こうした学びを通じて培った力は、卒業後に企業などでグローバルなスキルが求められる部署に配属された際に活かせるだけでなく、自ら手を挙げて海外との仕事や新たな挑戦の機会をつかむための土台にもなっていると思います」

TGLグローバルリーダー認定証授与式。年間の認定者数は30~40名にのぼる
文学部:M&A総合研究所、七十七銀行、日本銀行
教育学部:大林組、関西電力、仙台放送、電通
法学部:アイリスオーヤマ、KDDI、トヨタ自動車
経済学部:NTTデータ、サントリーホールディングス
理学部:スカイマーク、積水ポリマテック
医学部 保健学科:東北大学病院、大塚製薬
歯科研究科:東北大学病院、厚生労働省
薬学研究科:アステラス製薬、花王、カゴメ、富士フイルム
工学部:国土交通省、防衛省、旭化成ホームズ
農学部:農林水産省、ADKマーケティング・ソリューションズ
東北大学 グローバルラーニングセンター長
末松 和子 先生

大学では、どうしても同じ専門を学ぶ学生同士で集まりがちですが、TGLプログラムの指定科目では学部・専門分野の異なる学生や留学生と協働する機会があります。卒業式の日に、「1年次にTGLの授業で一緒になっただけ」という学生同士が再会して、一緒に写真を撮っている姿もよく見かけます。
TGLプログラムの指定科目の授業には、各学部の中でも本当に優秀な学生が集まっています。専門も文化も異なるからこそお互いの刺激になり、わかり合えれば生涯の友人になる。TGLプログラムには、そんな出会いを生み出す場としての魅力もあると言えます。
東北大学 工学部
化学・バイオ工学科4年 M.Sさん
私は修士までの3年間で、生物に着想を得た、新しいゲルの合成法に取り組んでいきたいと考えています。
入学時、東北大学の理念「研究第一」に魅力を感じつつ、研究をよりよく進めるには、自分の研究の価値を伝え、仲間やアイデアを集める力も欠かせないと考えて、TGLプログラムに挑戦しました。本を読むだけでは得られない TGLプログラムの密度の濃い経験を通して、コミュニケーション能力やプレゼンテーションスキル、課題解決力など、研究の土台となる素地を整えることができたと実感しています。
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