夏に勉強を頑張ったのに、秋口の模試の結果が低調でガッカリ…という人も多いはず。そこで志望校の変更が頭をよぎっても、結論を急いではいけない。これから学力がぐんと伸びる可能性は高いのだ。実際にどれくらい伸びるのか、入試分析のプロに伺った。
編集協力◎笹原風花

駿台予備学校 入試情報室長
城田 高士 さん
駿台予備学校の東大専門校舎・医学部専門校舎や現役生専門校舎などで、長年にわたり進路指導を担当。多くの受験生を第1志望の難関大に送り出してきた。校舎責任者を経て現職。豊富な指導経験も踏まえた入試情報の発信を行っている。

下図(図1)は受験生(現役生)の学力の伸びのイメージを表したもので、10~12月にかけてグッと伸び始め、受験シーズンにかけて急上昇することがわかります。一方、10月頃までは伸びは緩やか。この時期には模試の判定や偏差値が下がってしまうこともあり、人によっては「伸び悩み」に苦しみます。
伸び悩みには2つの要因があります。1つは、学力の伸びにはタイムラグがあるから。勉強の成果が表れるには、最低でも3か月はかかります。夏の努力が実を結ぶのは10月以降なのです。もう1つは、自分だけでなく周りも努力をしているから。偏差値は相対的なものであり、全体のレベルが上がれば偏差値は上がりにくくなり、下がることさえあり得ます。10月に返却された模試で判定がCやDだと不安になりますが、これはあくまでも「9月の時点で受験本番を迎えた場合の合格可能性」であり、今後の伸びを想定した判定ではありません。今こそ我慢のときなのです。


高校によっては、10月返却の模試の結果に応じて志望校や併願校を決めるところもあるでしょう。予備校の立場としては、「まだ下げなくて大丈夫」と助言したいと思います。先述のように、特に現役生はこれからまだまだ学力が伸びます。C判定・D判定だからとあきらめるのは「もったいない」のです。
入試までにどれくらい学力が伸びるのか、実際のデータ(難関国立10大学の志望者データ)で確認してみましょう。2024年9月実施の共通テスト模試の結果と2025年共通テストの結果(ともに6教科)を比べると、現役生の7割以上が50点以上伸びています(図2)。最も多いのが70~80点伸びた層で、200点以上伸びた人もいました。また、同年9月実施の記述・論述式模試の受験者の合否偏差値分布を見ると、例えば慶應義塾大・経済学部の場合、C・D判定はもとよりE判定でも合格している人が相当数います(図3)。データが示すように、あきらめずに努力を続ければ、まだまだ学力は伸びるのです。



では、受験校は、いつ・どのように決めればいいのでしょうか。私たちは、「第1志望校は最後まであきらめるな」という前提のもと、11月実施・12月返却の模試で最終的に受験校を決めるよう指導しています。
その根拠となるのが、下図(図4)のデータです。2024年9月実施の記述・論述式模試の受験者のうち、「第1志望校を貫いた受験生の入試における合格率」を見ると、C判定では56.8%、D判定では40.6%、E判定でも19.1%の受験生が合格しています。たとえ判定が思わしくなくても最後まであきらめない人、努力を続けた人が合格をつかんでいるのです。また、併願校についても、昨今は確実に合格しやすくなっていることから、A・B判定が出ている安全圏の大学で合格を押さえつつ、チャレンジ校を増やすようアドバイスしています。第1志望校は最後まであきらめない。受験校決定はギリギリまで粘り、最後の伸びを想定して決める。これが、大学受験で後悔しない鉄則だと言えるでしょう。

入試までに学力をより効率的に伸ばすためには、自分の「伸びしろ」を見極めてそこを徹底的に攻略する、戦略的な学習が不可欠です。そこで有効活用してほしいのが、模試の個人成績表です。例えば、共通テスト模試の個人成績表には、小問ごとの正答率と自分の正答状況(○・×)が明示されています。最優先で攻略すべきは、「正答率が高いのに自分は×だった問題」。入試本番でこういう問題を落としてしまうと致命的なので、まずは「みんながとれる基本問題を落とさない」ことを目指しましょう。入試本番では、他の受験生より1点でも多く得点することが求められます。過去問演習だけでは見えてこない「他の受験生の得点状況」を意識しながら、着実に伸びしろを埋めていきましょう。
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