
デジタル技術の発展で到来したビッグデータ時代。その社会・地域の課題解決に挑む、新しい学びが広がっている。データを扱う力を身につけながらも、専門分野やアプローチはさまざま。そんな新設学部の特色を紹介する。
情報・写真提供◉熊本大学・福井県立大学・宇都宮大学
編集協力◉株式会社エディキューブ

情報融合学環長
城本 啓介 先生
「データを活用してあらゆる専門や立場の人と協働することで、社会課題を解決できる人材を育てます」

「工場に人がいない!」。1年次に訪れる地元の半導体関連の工場見学で、毎年学生たちが驚く。学環長の城本先生は言う。
「到着する前、学生たちは人が機械を使って手を動かしているシーンを想像しているんですね。しかし、機械だけで製品が作られるリアルな製造現場を目の当たりにして、『この機械はどうやって制御しているんだろう?機械だけで品質は保てるのか?』という疑問を抱き、そのためにはデータサイエンス(以下、DS)が必要であることを実感するのです」
情報融合学環の大きな特徴は、数理・DS・AI(人工知能)を学びの核とする専門知識や技術が、実社会のどこでどう役立つのかという「社会実装力」まで身につけられること。
その力を育てるのが、PBL(Project Based Learning/課題解決型学習)科目だ。自分の考えを他者に伝える1年次のプレゼンテーション実習を経て、2年次にはデータに基づいた課題の発見や分析、解決策の提案までの基礎を修得。3年次には企業などから提供された実データを用いて実社会の課題を掘り下げる。DSの知識・技術を段階的に深めつつ、それを実際の課題解決に活かす経験を重ねることで、社会実装力を着実に高めていくわけだ。

授業では、グループでのディスカッションやプレゼンテーションの機会も多い。
生成AIを使ったことがある人も多いだろう。質問に対して即座に答えが返ってくるが、それが正しいかどうかは自分で確認・判断しなくてはならない。この確認・判断に重要なのが文理融合の学びだ。たとえば、経済に関する回答を判断するには経済学の知識が必要なように、AIの答えを社会で正しく活かすにはその分野の知識が不可欠だからだ。
2年次に分かれる「DS総合コース」では、行政学、経済学、医学、農学といった幅広い科目を選択して履修。もう一方の「DS半導体コース」では、電気回路や電磁気学、半導体工学など、半導体製造の理論や技術を学ぶ。
「DSやAIを活用する分野の知識は“広く浅く”、興味のあるものだけでいい。その代わり、どの分野でも通用する、データを適切に扱える技術はしっかり修得してもらいます」
DSやAIの基礎となる線形代数や微分積分、統計学といった理系科目が必修。文系型でも受験できるため文系出身の学生もいるが、独自の学習支援体制が充実しており、学環新設から3年間で文理出身による成績の差はないというから心強い。


2025年に新設されたD-Square(ディー スクエア)は、情報融合学環の学生や半導体・情報数理専攻の大学院生などが、ともに研究・教育活動をする拠点。

熊本大学 情報融合学環
DS半導体コース
3年 H.Aさん
数学の基礎固めを徹底し、他学部の過去問も活用
IoT商品の企画・開発に興味があり、ハードウェアの基盤である半導体と、ニーズを捉えるマーケティングを文理横断的に学べることから受験を決意。この学環の過去問がなかったため、数学は教科書レベルの問題を完璧にすることで基礎を徹底し、同大学工学部の過去問で出題傾向の把握や記述力アップを図りました。将来は、人々の生活を支えるIoT商品の企画・開発を通じて、デジタル化によって希薄化しつつある人と人の「対面のつながり」を再構築したいです。
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