英語(リーディング) 千葉県・東邦大学付属東邦中学校・高等学校 佐々木 欣也 先生
「英語は口を動かす実技科目だ」をモットーに、「音読」を最重要視した熱い授業を展開中。著書に『共通テスト英語 図表・グラフを含む問題』『大学入試 Basic Lecture 動画でわかる英文法[必修文法編]』(ともに旺文社)など著書多数。
読解量は平年並みだが、難化傾向が続く リーディングの総語数は年々増加し続けていて、2024年は約6,300語となった。2025年は、大問数が6題から8題に増えるという予想から、同程度の総語数か、それ以上になると考えられる。内容はウェブサイトやレポートなどの平易な文書から、新聞・物語文・論説文など、様々な種類の長文が出題される。大量の文章を読んで、各設問に必要な情報を素早く探し出す「情報検索」の側面が強い。平均点は2022年:61.8点、2023年:53.8点、2024年:51.5点と年々下がり続けていて、この難化傾向はしばらく続くと思われる。
● エッセイ(論理構成や展開) 傾向 試作問題Bの新傾向問題では、「環境に配慮したファッション」をテーマに文章を作成する過程で、教師のコメントを踏まえて推敲する問題が出された。文章の論理構成や展開に配慮して文章を修正する力が問われたので、2025年は論理マーカーの穴埋め問題が出題されそうだ。
対策 試作問題では、「in contrast:対照的に」の穴埋め問題や、「as a result:結果として」から始まる選択肢を選ぶ問題など、論理的な読解力が問われている。なんとなく文章を読むのではなく、3大ロジック「対立 」「反復 」「因果関係 (原因と結果)」を意識した論理的な読解力に加えて、記事の内容を要約する力も同時に養っていくことが不可欠だ。
● 複数人の意見 傾向 試作問題Aの新傾向問題では、「授業中における生徒のスマートフォン使用の是非」というテーマで、5者の意見を読み、その根拠を整理する問題が出された。同様に、自分の意見を書くために、複数の資料を活用して文章のアウトラインを組み立てさせる問題になるだろう。
対策 Step1では、複数の文書を読み、類似点と相違点 を整理しよう。「賛成者と反対者はそれぞれ誰か?」「誰と誰が同意見か?」などを確認しながら本文中にメモするとよい。Step2以降の問題では、筆者が賛成・反対どちらの立場 なのかを正確にとらえて、その根拠となる部分を与えられた参考資料やグラフから素早く探し出し、本文と資料の内容を結びつけよう。
● 新聞・ストーリーなど 傾向 2024年は、学校新聞を題材に、時系列順に並べる問題や、本文に言及がないものを選ぶnot問題、そして本文には直接の言及はないが「most likely:もっとも可能性が高い」選択肢を選ぶ問題が出題された。2025年も類似した形式の出題が予想される。
対策 時系列に沿って並び替える問題については、本文は出来事の順番通りに書かれていないことから、過去完了形などの時制表現 や、beforeやafterなどの「時を表す接続詞 」に注意を払いつつ、時系列を整理しよう。not問題やmost likely問題では、「消去法 」が有効だ。選択肢を先読みして、本文と丁寧に照らし合わせながら選択肢を絞り込んでいくこと。
● 記事とアンケート 傾向 2024年は、あるテーマについての記事とアンケート結果を読み、グループ討論用の配布物を作成する問題が出題された。今後も、複数の文書を参照して、表の数値を比較しながら条件に合う選択肢を複眼的に考察する力を問う問題が狙われるだろう。
対策 図表の情報と文字情報 を素早く一致させる訓練を積み重ねたい。解く手順としては、まず記事のタイトルから全体像をつかみ、その後に設問を先読みし、本文と図表の数値を「往復運動」するとよい。複数の図表の該当箇所を線で結んだり、印を付けたりしながら読み進めることをおすすめする。数値を問う問題の場合、計算や言い換え をする必要も生じるので要注意だ。
● 物語文 傾向 2023年に続いて2024年も物語文が出題された。2024年は「高校時代の友人が20年後に再会する話」で、要約ノートの空所を埋める問題だった。時系列順に並べる問題や、登場人物の情報が問われている。2025年も登場人物の行動や考えを問う問題が予想される。
対策 5W1H を把握して出来事を整理しながら読み進めよう。登場人物が1人の場合は「出来事の順番を正しく追うこと」、登場人物が複数の場合は「新しい人物が登場するたびに立ち止まり、人間関係を把握すること」が大切だ。時系列順に並び替える問題は、本文中の述語動詞 に番号を振ったり、線で結んだりしながら、出来事の流れを把握する訓練を積み重ねるとよい。
● 論理的な文章 傾向 2024年は、「チリペッパー」に関する論理的な文章を読み、プレゼン用のスライドを空所を埋めて完成させる問題であった。ポスター完成問題や内容一致問題は頻出の問題形式だけに、文書と図表の「合わせ技」の問題は定番化していると見るべきだろう。
対策 文章の論理展開を意識して、文章全体を把握する要約力が求められている。論理マーカー に注目し、段落ごとに要旨を把握することが重要だ。問題の中には、正答を複数選ばせる設問や、解答の根拠が複数箇所にまたがる設問もあり、1箇所だけ読んでも正解を得られない工夫がなされている。複数箇所 を参照しながら、冷静に問題に対応することを心がけよう。
共通テスト&センター試験過去問はこう使う! 演習開始時期:11月上旬~ 目標使用量:週に1回分
共通テストの過去問は4年分しかないので、すべて解き終えた場合はセンター試験を活用しよう。具体的には、センター試験の第4~6問を40分以内で解くとよい。特にセンター試験の第4問の図表問題は共通テストと類似しているので、重点的に練習すること。センター試験の第6問を使って長文読解力を鍛えたい場合は、2008年以降の説明文問題を解くとよい。
教科書などで語彙力を確認しながら、予想問題集や模試を積極的に活用しよう。そして、復習時には正答率が低かった原因を分析することが大切だ。間違えた原因が「語彙力不足か?」「読解速度が遅いのか?」「設問処理の仕方に問題があるのか?」など、自己分析を通じて弱点を発見し、少なくとも週に1回は予想問題を解いて、何回も練習を積み重ねるとよい。