ひと口に建築物といっても、その種類はさまざまだ。個人の住宅やマンションなどの共同住宅をはじめ、学校や病院などの公共施設、映画館や劇場、ショッピングモール、オフィスビルなど、規模や用途によって独自の設計を行わなければならないものも多い。それらを設計する建築士のいちばんの使命は、人々が安全に過ごせる空間を構築すること。同時に、建築物の利用目的やユーザーのライフスタイルを考慮して、より快適性の高いものに仕上げることが求められる。
そうした建築物の設計や工事監理を担う建築士の資格は、一級建築士、二級建築士、木造建築士と大きく3つに分類されている。
そのうち木造建築士と二級建築士には設計および工事監理できる建築物に制限があるが、一級建築士は制限がない。つまり、極めて大きな超高層ビルや何千人もの観客を収容する大劇場などを設計することが許されている唯一の資格が、一級建築士なのである。
建築士法によって、以下の①~④に示すような建築物に関して、設計および工事監理できるのは、一級建築士のみと定められている。
①学校、病院、劇場、映画館、観覧場、公会堂、集会場、または百貨店を使用目的(用途)とする建築物で、延べ面積が500平方メートルをこえるもの。
②木造の建築物または建築物の一部で、高さが13メートルまたは軒の高さが9メートルをこえる場合。
③鉄筋コンクリート造および鉄骨造、石造、レンガ造、コンクリートブロック造、無筋コンクリート造で、高さ13メートルまたは軒高9メートルをこえる、もしくは延べ床面積が300平方メートルをこえるもの。
④延べ面積が1,000平方メートルをこえ、かつ、階数が2階以上である建築物。
これらの建築物は公共性の高い案件が多いだけに、設計・工事監理にあたっては、クライアントである施主の要求レベルが必然的に高くなり、社会的責任も重い。建築に関する知識以外に、施主としっかり意思の疎通を図るためのコミュニケーション能力や、幅広いライフスタイルを理解する知識やセンスも求められる。
なお、2009(平成21)年より、一級建築士のみが扱える大規模建築の中でもより高度な専門能力を必要とする一定の建築物に関しては、構造建築一級建築士/設備建築一級建築士が関与するよう義務づけられた。構造建築/設備建築一級建築士とは、それぞれの分野で一級建築士として5年以上の経験を積み、所定の講習を修了した者に交付される認定証。プロ中のプロとして、耐震性をはじめとする安全な建築物の普及に尽力する。