調理師の定義を正確にいうと、「調理師の名称を用いて調理の業務に従事することができる者として都道府県知事の免許を受けた者」となる。なんとももって回った言い方だが、肝心なのは「調理師の名称を用いて」と「免許を受けた者」という点だ。要するに調理師と名乗って料理の仕事をするには免許が必要、ということである。
では、調理師と名乗らなければ免許がなくても調理をしてよいのか? 実は、そうなのである。免許をもっていなくても、「料理人」になることは可能。実際に、飲食店の調理場で調理をしている人すべてが調理師とは限らない。
では、調理師の資格が保証しているものは何かといえば、料理の腕というよりも、料理人としての基本的資質であり、調理のプロフェッショナルとしての信用である。
料理人というのは、不特定多数の人に対して食事を提供するのが仕事である。となると、ただ味がよければいいのではなく、安全で、質のよい食事を出すのがプロとしての使命だろう。そのためには、食中毒を出さないための衛生に関する知識や、食品や栄養に関する知識、また、飲食サービスについての知識も必要だ。
調理師の免許はまさにそれら料理人として必要な総合的知識を証明するもの。試験の内容が衛生法規や栄養学などの科目になっていることからも、そのことがうかがえる。
したがって、調理師免許の取得は、あくまでもプロの料理人のスタートラインにすぎない。実際の料理技術や味の追求などの面は、調理の現場で修業を積み、習得していくわけだ。
そもそも調理の仕事は、腕前がものを言う職人的な世界だった。名称も板前やコックなど、分野ごとの通称が使われていた。しかし、ほかの多くの技術職と同様、資格制度が望まれるようになり、1958(昭和33)年に、調理師法が制定された。これによって、国が認める料理のプロ=調理師という資格(免許)が確立した。
現在では、調理師の免許は、料理の世界で働く上で重要な意味をもっている。飲食店などは調理師を置いて業務を行うよう努めなければならない、とされており、レストランなど飲食店の多くが料理人の採用条件として調理師免許の取得を挙げている。
さらに、将来、独立開業をめざす人にとっては、料理人としてのステータスを示し、社会への信用を得るためにももっておきたい資格といえる。
もう一つ、調理師免許をもつ人は食品衛生責任者になることができる。食品衛生責任者とは、食品衛生法に基づき、飲食店を経営する際に施設ごとに必須とされる職務で、一定の資格が必要。レストランで「食品衛生責任者/○○○○」と氏名を明記した表示を見たことがあると思うが、調理師ならこの責任者になれるので、就職や、独立する際にも調理師免許を生かすことができる。
以上のように、調理師とは、確かな知識を裏付けに調理を行い、多くの人々においしく安全な食事を提供することができる人をいうのである。