医学の発達によって、昔ならとても助からないような病気やけがをしても、命を取り留めるケースがたくさん見受けられる。その理由の一つは、複雑で高度な機能をもつ医療機器の開発に成功したおかげだろう。
これらの先端機器は、メディカル・エレクトロニクスとも呼ばれ、医療機器である一方で、最新の電子機器であり、一種の医療ロボットともいえる。その取扱いには、電子機器や工学に関する専門知識が不可欠であるため、医学と工学の両方に通じた専門職が必要となり、臨床工学技士が誕生した。
臨床工学技士は、医師の指示にしたがって生命維持管理装置などの医療機器を操作し、保守点検を行う。専門知識をもって装置を安全に、的確に動かすことで、医師が先端機器を利用して医療を行えるようサポートしていくわけだ。
臨床工学技士が関われるのは、あくまでも装置部分の操作や身体への接続部分までで、患者には直接関わらない。しかし、患者にとっては、まさに装置こそが命綱なのだから、装置を扱う臨床工学技士は、患者の命そのものを扱っているともいえる。サポート役とはいえ、医師と同じく、重大な責任を負っているのだ。